HCD認定ニュース

公開時期が遅くなり申し訳ございませんが、2014年度の専門資格認定試験の審査結果をご報告いたします。

 

 

1. 審査結果

NPO法人人間中心設計推進機構(HCD-Net)が、2009年度から実施している「人間中心設計専門家」資格認定の2014年度(第6期)の試験が完了しました。既に合格者の発表は3月末にすんでいますが、今年度は51名の方々が人間中心設計専門家として、また2013年度から新設された人間中心設計スペシャリストとして52名の方が認定されました。全体の内訳は、HCD-Net会員が16名、一般が87名です。

専門家、スペシャリストを合わせると受験者数は昨年度に対して増えています。各方面のWebサイトでの専門家の活動紹介などを通じ、この制度に関する関心がますます高まってきていることが考えられます。ただ残念なことに、今年度は受験申込をされながら最終的に申請書を提出されなかった方が目立ちました。

 

2. 審査基準

HCD/UXDの専門家に求められるコンピタンスは時代の要請とともに少しずつ変化しています。専門資格認定委員会では、毎年必要とされるコンピタンスマップの精査、見直しを行って来ました。2013年度にユーザーエクスペリエンスデザイン(UXD)関連の業務の拡大など、HCD/UXDの業務に関わる実務家の業務の質の変化に対応するため、新たに設置された認定スペシャリストのコンピタンスも含め、コンピタンスマップの大幅な改訂を実施しました。ただ、2014年度は、特に審査基準の見直しは行わず2013年度版を使用することにし、解説のわかりやすさを改善するにとどめました。

HCD基本コンピタンス(A群)、プロジェクトマネジメントに関連する項目だけをまとめたプロジェクトマネジメントコンピタンス(B群)、従来は組織へのHCDプロセスの導入や研究開発能力に関わるコンピタンスに人材育成能力を加え、導入推進コンピタンス(C群)のくくりもそのままとし、認定専門家はA群から7項目以上、B・C群から3項目以上(ただしB群、C群からそれぞれ1項目以上含む)のコンピタンスを有することを認定基準にし、認定スペシャリストはA群から6項目以上を有することを認定基準に設定しました。

なお、コンピタンス記述用紙は、記述のしやすさからB群→A群→C群としました。

 

3. 審査経緯

2014年度は以下の日程で審査を行いました。

募集要項公開 2014年11月25日

申請開始   2014年11月25日

申請締切   2014年12月31日

書類提出締切 2015年1月25日

合格発表   2015年3月31日

今年度は、初めての関西地区での受験者説明会を含め受験者説明会を2回、審査員説明会を1回行いました。例年のように審査員説明会では、審査のばらつきをより少なくするために審査基準を正確に理解していただくことと、初めて審査に当たる方には審査要領を十分理解していただくことで、審査精度の維持向上を狙いにしました。

今年度は認定専門家の人数が多くなってきたことから、これまで通り審査経験年数多い方を必ず含めるとともに、1人の受験者に対して同業種、異業種からなる5人の審査員が厳正な審査を行いました。最終的には、専門資格判定委員会において、一人一人の受験者の審査結果に関して各審査員の審査内容を個別に確認し、最終的な合否の判定を行いました。

 

4. 審査における課題

今年の審査においても、これまでと同様に、受験者説明会でも強く意識し説明しているにもかかわらず、記述の内容からは申請者が主体的にどのように関わっているかが読み取れない申請が多くありました。内容的には、HCDの活動がチームで実践されることが多い中で、自分が何をどう分担してどのようなコンピタンスを発揮したのかが読み取れない記述が目立ちました。また、実践の中でどんなコンピタンスを発揮したのかではなく、やった手順や手続きしか書かれていない事例もありました。

今年の傾向として、規定は充たしているものの実務経験年数が少ない方が散見され、記述されているプロジェクト数やコンピタンス数も規定ぎりぎりの方がいました。専門家、スペシャリストの実務経験はそれぞれ5年以上、2年以上が必要となっていますが、5年もしくは2年あれば十分と言うことではありません。コンピタンスの発揮が申請できる多くのプロジェクトの実戦経験を積むことが必要となります。少ない記述では、申請者のコンピタンスが読み取れないことやその再現性に疑問が生じることがあります。

さらに、プロジェクトマネジメントや啓蒙、教育に関わるコンピタンスは持たれているにもかかわらず、HCD実践に関する基本コンピタンスが十分でないケースもありました。

本認定試験は、記述された内容のみで合否を判断する書類審査方式です。わかりやすい記述ガイドライン、記述例、コンピタンス説明書を用意することはもちろんですが、

申請者の皆さんに、(説明会等に参加していただき、) コンピタンスの定義の正しい理解と書き方を確実に理解していただく必要性があると考えます。一方で、審査員の方の審査結果の精度を高め、審査のばらつきをさらに低減してゆく努力の必要性も感じています。

 

5. 来年度以降に向けて

人間中心設計専門家認定制度は、現在1級相当の資格として「認定HCD専門家」、2級相当の資格として「認定HCDスペシャリスト」で構成されています。さらに、3級相当の検定試験を従来より準備中ですが、実現時期が遅れています。

また、「認定HCD専門家」も既に300名を超える規模になってきていることから、さらに上位の専門資格や領域別の専門家認定の必要性も視野に入れることが求められるかも知れません。

 

専門家の多くは人間中心設計、ユーザーエクスペリエンスデザイン、サービスデザインの業務を専門とされていることが多いと思いますが、スペシャリストの資格は、まだ実戦経験が少ない方々や人間中心設計、ユーザーエクスペリエンスデザイン、サービスデザインを専業としないデザイナーやエンジニア、商品企画の方々、HCD-Netにまだ関わりの少ない業種の方々にももっと多く取得していただきたい資格です。今後、積極的な広報活動を通じて、さらには既に資格を取得されている専門家・スペシャリストの皆さんからの働きかけによって、裾野を少しでも広げてゆきたいと考えています。

また、昨今人間中心設計の実践においてもビジネスや組織改革のためのコンピタンスがより求められるようになってきています。認定に必要とされるコンピタンスもその内容を継続して見直し、常にその時代に求められる能力に沿った認定を実施してゆくつもりです。

 

6. お願い

本資格は、HCD-Netが人間中心設計実践において定めた一定の基準を充たしたことを認めるものであり、今回資格を認定された方は、各方面において今まで以上に人間中心設計、ユーザーエクスペリエンスデザイン、サービスデザインの実践に励まれるとともに、啓蒙普及にご尽力いただくようお願いいたします。

また、今回基準に満たなかった方々も、人間中心設計専門家・スペシャリストまたはそれに準ずる資格に認定される方々ばかりと認識しておりますので、なお一層の実践を通したスキルの獲得、知識の習得により来年度以降の積極的な申請を心よりお待ちしております。

 

なお、この制度は、3年ごとに資格を更新する仕組みになっています。すでに、資格を取得された多くの専門家が、人間中心設計分野での実践、知識の習得などを通じて必要なポイントを獲得し、資格を更新されています。

 

最後になりましたが、審査にあたり認定人間中心設計専門家の方々に、お忙しい中にもかかわらず多くのご協力をいただきました。改めてこの場を借りて御礼申しあげます。

 

2015年5月

NPO法人人間中心設計推進機構

規格化/認定事業部 専門家資格認定委員会