HCDコラム

なにごとも体験してみねば、とApple WatchにSuicaを導入した。iPhoneは思うところあり、小ささを求めるようになったので、一世代前のiPhone SEを使っている。なので、Suicaは使えない。結果、Apple Watch Series 2にSuicaを入れてみることにした(この言い方もちょっと変だが)。

iPhone 7では、わざわざ日本独自仕様にしてまで、既存のSuicaのデータを吸い取ってiPhone内に取り込む機能があるが、そうしない場合は、iPhoneでSuicaアプリというものを使って、新規のSuicaを発行することになる。で、そのためにはApple Payという独自の支払い機能を立ち上げなければならないのだが、iPhone 7とそれ以前のiPhoneとでApple Payとして使えるクレジットカードが異なっているようで、手持ちのクレジットカードではiPhoneのApple Payアカウントを作ることはできなかった。ちなみに、同じカードはApple Watchのほうには取り込むができた。このあたりかなりややこしい。

で、やり過ぎ感もあったが、このためにクレジットカードを新たに作り、それを使ってApple Payアカウントを作り、で、無事にSuicaを作ることができた。対応しているカードを使えばわりとさくさく進めることができるが、問題はどのクレジットカードが非対応なのかがわかりにくいということはある。まあ、これは時間と共に解決される問題であろう(ちなみにさらに余談であるが、作成したSuicaにオートチャージを設定しようとしたら、作成時に使ったのと同じクレジットカード情報をさらにもう一度入力して、オートチャージ設定をしなければならなかった。ここは担当部署が縦割りなっている弊害だろうか)。

これで晴れてApple WatchでSuica機能を使えるようになった。これまでは、iPhoneの裏にPASMO(東急系のSuica互換カード)クレジットカードをくっつけて、それを使っていたのだが、これを機にそれもとってしまった。実はこの疑似一体化はかなり便利で、いま思ってもこれはこれで問題はなかった。かつ、なにがよいかというと、差し込んでいるのはクレジットカードでもあるので、Suicaが使えない場でもクレジットカードが使える状況であればなんとかなるということがあった。なので、ちょっと出かけるときはこの疑似一体化iPhoneだけでわりと安心であった(ただ、現実問題として、ランチタイムは会社のある恵比寿近辺のそば屋やカフェなんかは現金オンリーなところが多いので、実際は現金も必要である)。

Apple WatchでのSuicaは、改札を通るときにはだいぶ具合がよい。個人的にもともと時計を右手に着けていたのでなおさらであるが、コートや手袋くらいの厚さであれば気にしなくてよいので、歩きながらなにかを出すという行為を経ないで改札を通れる。この点ではiPhoneよりApple Watchのほうが向いているだろう。逆にコンビニで支払いをするときには、コンビニによっては一度Suicaをタッチして、その後なんのカードかを選択してから引き落としがなされるようなものもあるので、その間中ずっと右手を出し続けているのは不自然で、どちらかというとQUICPayもしくはiDでの支払いのほうがよいかもしれない。これであれば、あらかじめQUICPayで支払うと言って、その後にタッチするだけでよい。

QUICPayもしくはiDは、iPhoneやApple WatchのApple Payで採用されている非接触型のクレジットカードの支払い方法である(と思っているが、ちょっと怪しい)。iDは見たことがあった気がしていたが、QUICPayは正直あまり意識していなかった。ので、使えるのかどうか不安であったが、意外とコンビニは対応していて、かつ店員さんにQUICPayで、というとどこでもすんなり通じる(そりゃそうか)。が、コンビニ以外だとまだどれくらい使えるか未知数ではある。すくなくとも、クレジットカードで払えるところはQUICPayでいけるか、というとまだまだであろう。海外だとカフェなんかでApple Pay対応ってシールが貼ってあるところは意外とあったが、日本ではApple Payでいける、という表記は少なくとも僕が行くお店なんかではまだ見たことがない。逆に言えば、当然だが、クレジットカードだけを受け入れているところでは、このQUICPayやiDは受け付けてもらえない。クレジットカードよりもセキュリティレベルが高いということが売りのようであるが、やはりこういったものは対応するところがあってはじめて成立する。その意味では、残念ながらクレジットカード代わりにはまだなっていない。

いまの日本でのクレジットカード受け入れの規模でQUICPayもしくはiDが普及すればいろいろな支払いがかなりスピーディにはなるだろう。特に日本ではタクシーでクレジットカードを使うときはいつもかなり時間がかかるので、このあたりが改善されればメリットは大きい。
といったところがしばらくApple WatchでSuicaを使ってみた実感であるが、実際問題やはり日本ではQUICPay、iDといったものを使う理由はなく、Suicaだけあればこの手のものは事足りるように思う。という状況だからAppleもわざわざSuicaに対応をしたのだと思うが、他の決済方法はよっぽどの理由がなければ普及は難しいのではないだろうか。
やはり現金もある程度は必要なので、財布をまったく持たずにというわけにはいかないが、カバンから財布を出す頻度がものすごく減ったことは事実である。財布レス生活まで、もうちょっとだろう。


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