HCDコラム

先日、会社で挨拶月間というものがありました。毎朝正門の前で役職者が並び「おはようございます」と社員に挨拶をするものです。挨拶促進は良い活動だと思うのですが、残念ながら体験としてはあまり良いものに感じませんでした。

少し極端な言い方をすれば、偉い人に待ち構えられて「挨拶をしなさい」と言われている様に感じます。それではやはり気持ちの良いものではありません。一方、正門に立って挨拶をする側に取っても、通行者全員に声を張り上げ続けるのも大変なはずで、両者にとって良い体験とは言えないでしょう。

私はこの活動に反対するわけではありませんが、いまひとつ納得がいきません。みんなで挨拶をしましょうという狙いはわかりますが、社員は本当に挨拶をしないのだろうか、と少しもやもやしてしまいました。そこで、こっそりと実態調査することにしました。

調査方法は以下の通りです。私が正門から自分の居室に移動するまでの間に、すれ違う全ての人に対して挨拶をして何人の人が返答するかをカウントしました。結果から言うと3ヶ月間の間、649回挨拶をして383回の返答が返ってきました。割合にすると59%です。感覚的には思ったより多くの人が挨拶し返してくれました。

挨拶をしても返事が返ってこない場合は心が傷ついたりするものですが、こういう活動の場合は挨拶が返って来なくても心が傷つきません。中には絶対に挨拶しない人や、私を避ける様に歩く人もいましたが、挨拶を続けていると顔は覚えてくれる様です。嬉しかったのは最初は挨拶してくれなかった人が挨拶をしてくれる様になったことでした。これは私の顔を覚えてくれて、「あの人は挨拶をする人だ」と安心してくれたのでしょう。大げさな言い方をすれば、これは相手の信用を得られたと言えます。挨拶はお互いを信頼するきっかけの行為なのかもしれません。

話を戻しますが、挨拶の返答率は日によってばらつきがある様に感じました。曜日別に集計してみると月曜日は返答率が低く、水曜日と金曜日(共に定時退社日)は返答率が高く見えました。因果関係はよくわかりませんが、もしかするとその日の気分が挨拶に影響するのでしょうか。週別に平均を集計してみると、ばらつきはあるものの徐々に返答率が上がっているのがわかります。これは挨拶活動の効果が影響しているのかもしれません。(グラフ参照してください)

他にも発見はあったのですが、長くなるのでこの辺りで終わりにします。それではみなさまよいお年をお迎え下さい。



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