4. 一貫性を確保するためのツール
4-1. ガイドラインの体系化
第1回でも述べられている通り、一貫性の観点で組み込みシステムへ実施案を展開するためのツールとしては、ガイドライン文書の発行ばかりでなく、より詳細な設計デザイン手法を記述した「スタイルガイド」や「デザインテンプレート集」などを用意することが考えられる。特にGUIデザインについては「スタイルガイド」が有効であり、図6や図7のようなボタンやアイコン、ダイアログボックスなどUIを構成する部品のレベルでの詳細なデザインスタイルを記述する。 UI部品のメニューのようなもので、設計者やデザイナーはここからデザインの雛形を読み取るようにする。ただし、あまり詳細に書きすぎるとページ数も膨大になり、開発コストがかさむだけでなく、利用もしづらい。オフィス複合機の場合で、概ね100ページ前後を目安にすると良い。
またGUIの部品(注;ボタン、アイコンなどの画像ファイル)は関係者がアクセスできる共有フォルダーなどに格納し、再利用やデザインの流用ができるようライブラリー化すると良い。これによりさらに一貫したデザイン管理が可能となる。いわばデータベース化であるが、GUI部品はオフィス複合機程度の中規模なものでも3000ファイル程度になることもあるため、全体を俯瞰し整合をチェックする意味からもライブラリー化は有効である。
操作方法については、共通のプラットフォームにより開発が行われる組み込みシステムに対して、基本となる画面遷移フローを標準化することを提案する。個々の機能に依存した詳細な操作の規定までは難しいにしても、詳細検討に雛形を提供するようなガイド的なものは開発可能であろう。また使用する用語やメッセージについてもデータの一括管理を行うことが有効である。特に用語は一度決めた後は継続的に使用することが望ましいので、対象となる機能の内容や決定した背景も含めて、情報を整理し保存する。こうすることで、後の改訂や変更が適切に行えるのである。
これらガイドライン及びツール類を『ガイドライン体系』として一括管理し、開発関係者間で共有できるような仕組みとして構築してはどうか(図10)。ガイドラインを、人間中心設計を進めるための直接的なツールであると位置づけるならば、この管理運営のプロセスは、間接的な支援システムとして位置づけられるものである。また一貫性の確保については共通部品やガイドラインを作ればそれで良いというものではなく、作ったものを組み込みシステムの実開発の中に如何にうまく導入し、効果的効率的に活用していくかが重要となる。この意味では、ガイドライン体系の管理運営に加えて、次に言及する『インタフェースの整合化活動』を含め、プロセス面での取組みが大切となる。

図10:ガイドラインの体系
4-2. 同種のシステム間でのインタフェースの整合化活動
昨今のスピードを重視した開発プロセスの中では、コンカレント開発が盛んに行われている。製品仕様の確定を待たずに開発着手し、トライアンドエラーで設計変更しながらやっとの思いで納期に間に合わせる、というような状況が垣間見える。ガイドラインも同様で、開発着手前に完成した形で閲覧できるような姿はまず無いと思った方が良い。第1回でも述べられているが、ガイドラインは開発と共に成長するものである(注;開発の成果からのフォードバックというかたちで図10に記述されている)。その意味で、成果をフィードバックさせる場が必要となる。実際にはガイドラインの開発者自らが設計レビューや技術検討会などの場に参画し、何をフィードバックさせるかを判断するわけである。同時に、ガイドラインの既存部分との整合という観点からもインタフェース開発への助言や勧告も行うわけである。ガイドラインを基にした判断や整合化活動の中での活用のしかたについては、第5回で詳しく解説する。
4-3. 組み込みシステムのシームレス開発に向けて
システムの利用という側面に目を向けると、組み込みシステムと言ってもネットワークの存在は無視できない。前述した通り、アプリケーションやWeb環境との連携や認証システムなどインタフェースの共通化が必要になるとも考えられる。システムそのものをスケーラブルなものにする必要があるというわけだ。操作や表示の一貫性も、このような利用環境を想定にしたつくりにしておく方が良い。具体的には、モバイル端末から、複合機やプリンターを経由して、ネットワークサーバー内のデータを閲覧する、などが考えられる。この場合、個人認証をどう行うかなど技術的な問題と共に、認証のためのインタフェースのあり方など、シームレスな環境下で一貫した作法が求められるところである。
5. まとめ
操作方法や表示の一貫性は多義にわたり、サービス構造のような抽象的なものからボタンのデザインなどかなり具体的なものまで含まれる。ただこれらは、自社内の開発の仕組みに大きく左右されるため、そういうものと無関係にただガイドラインだけを記述してもうまくいかない。使われないガイドラインというものも多々存在することも事実である。やはり既存の開発戦略や開発の仕組みに即したガイドラインを開発することが大切である。内容の記述だけでなくガイドライン活用のプロセスや改訂管理など、マネジメントの強い意思が、その運用には不可欠である。逆に言えば、ガイドライン開発を主管する担当部門のマネジメントの関与なくしては、操作方法や表示の一貫性の確保はあり得ないとも言えるであろう。
(第2回・おわり)
