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第3回「ユーザへのフィードバック」

カテゴリ: 人間中心設計とは

掲載日: 2006年03月15日

1. はじめに

機器やソフトウェアのユーザビリティの面から、システムからユーザにあたえるフィードバックの重要性は非常に高い。しかしフィードバックに関して、実際の開発に役立つ形での体系的な研究や書籍はほとんど見あたらないというのが現状である。本稿では、さまざまな事例やこれまでユーザーインターフェースのデザイン活動のなかで得られたことを中心にまとめていく。


またシステムからユーザに対して提示されるさまざまな情報の「表現」という面に関しても、主にフィードバックという切り口から見ていきたいと思う。


2. フィードバックとは

最初にフィードバックに関する簡単な定義をしておこう。ここで対象となるのは、図1のような操作のループを持つインタラクションシステムである。一般的な意味でのフィードバックは、「2. ユーザの操作」の直後にシステムから返される情報と考えられるが、2. の直前に提示されてユーザの操作を助ける情報もここではフィードバックに含めて考える。後に出てくるロールオーバーの例やフォーカスなどはマウス移動などの直後に出るものであるが、次の操作のために存在する情報である。またフィードバック情報は、主たるタスクを表す情報というより、操作を助けるためにシステム側から提示されるものである。


図1

図1


フィードバックは何もディスプレイへの視覚的な表現に限ったことではない。サウンドによるフィードバックも時として非常に有効であるし、触覚のフィードバックに関してもすでに研究段階からカーナビゲーションシステムなどによって実用の段階に入ってきている。


3. フィードバックの重要性

フィードバックの重要性ということについて、次のような指摘をしておきたい。HTMLで構成された標準的なWebページはフィードバックという観点から見ると、非常に貧弱な環境である。たとえば通常のPCの環境では当たり前のボタンのクリックに対する押し込まれたようなフィードバックもないし、タブのように表現されたものも、操作をしてみるとすぐにそれは単なる「タブの形をした絵」であることがわかってしまう。それでも毎日、世界中の多くの人々に使われて、情報の収集や交換に大いに役に立っている。だとすると、情報収集などに関してはフィードバックはそれほど重要ではないのだろうか?


もし当初からHTMLの仕様の中にフィードバックに関する要素が入っているか早い段階で取り入れられていれば、もっと豊かでスムーズな操作感が実現されて、比較できればであるが、より満足度の高い使用体験がユーザに与えられていたと考えられる。現状ではJavaScriptやFlashなどの高度な手法を駆使できる人のみが、リッチなフィードバックを実現するにいたっているが、これらは残念ながらその場限りの対応になっているといえるだろう。ここでのフィードバックによる成果とは、相対的により満足度の高い使用体験ということになる。


もう少しクリティカルな操作の例をあげると、最新鋭の航空機のコックピットにはコンピュータディスプレイが組み込まれているが、それらのユーザインターフェースにフィードバックの要素がなかったとしたら、と考えてみよう。フィードバックをつけたからといって、事故につながるミス操作をすべて防げるわけではないが、おそらくは何%かのミスは未然に防げることだろう。つまり、フィードバックは、必須でそれがなければ成り立たないものというより、コミュニケーション効果をより高めるもの、場合によって大きな事故の確立を下げる可能性のあるもの、といった性格の要素なのである。しかしそれでも、十分に取り組むべき価値のある課題ではないだろうか。


4. フィードバックの目的

フィードバックの目的には、以下のことが挙げられる。フィードバックをデザインし、作り込むことには少なからずコストがかかることだが、ユーザビリティを上げようとすれば適切なレベルで導入すべきである。


4-1. 操作感を高める


特にユーザの操作に対して、機敏にできるだけ適切な反応を返すこと。人は理由もなく待たされることを好まないし、いつまで待たされるかわからない状態であれば、なおさら不快である。場合によっては、機械がハングアップしていると思われてしまう。スクリーンボタンの押し下げなどに対するフィードバックの反応速度は早いに越したことがない。ボタンのフィードバックが1秒を越えたら、むしろシステムを実際以上に鈍重なものに見せてしまうかもしれない。


4-2. ミスの可能性を減らす


操作のミスにはいろいろなことが考えられるが、多くのミスはその場で気付ければ訂正は容易なものであり、その場で誤りを阻止できれば、行く先の大きな障害に至らなくてすむ可能性が高い。ミスを「気付かせる」ためには、内容やシチュエーションにもよるが、書かれた言葉によりも視覚および聴覚に訴えることが有効である。アニメーションなどの動的な表現も効果的である。


4-3. システムの状態や操作の理解の助けになる


操作前の状態と操作後の結果の関係を目に見える形で表示すれば、ユーザは自分の行った操作の結果を体感的に理解することができる。例えばウィンドウを縮小してアイコン化するときに、縮小の状態をスムーズにアニメーションで見せれば元のウィンドウとアイコンの因果関係がはっきりする。もしもこれが何もフィードバック無しで行われたら、小さいアイコンが生まれたことには気づかずに、ただウィンドウが消え失せたように見えてしまうだろう。


このように、フィードバックとは本来的な元の情報や結果の情報の間を埋めるものであったり、本来は目に見えない情報「つながり」や「順序性」を感じさせたりといった、ある意味ではニッチな情報であるとも言える。しかしこういった表現の積み重ねがユーザビリティの向上に少なからず役に立っているのである。