理事長

黒須 正明
以前、私が提唱した人工物発達学には幾つかのポイントが含まれていたが、そ の一つが垂直展開と水平展開という概念だった。垂直展開は、新しいも のが古 いものに置き換わることを意味しており、細かな改善の積み上げではなく、本質 的に従来の人工物の限界を超克した新たな人工物を開発すること を意味する。 水平展開は、新しいものがでてくるが、それが古いものと共存するような場合を 言う。
ユーザエクスペリエンスという概念が盛んに言われるようになった昨今、人間 中心設計推進機構については、ユーザビリティという用語を組織名称に 使わな いでおいて良かったと改めて思っている。ただ、注意しておくべきなのは、人間 中心設計イコールISO13407(今の ISO9241-210)ではない、ということだ。たしか にISO13407は、人間中心設計という概念を日本に広める契機にはなったが、人間 中 心設計という概念をあの四つの○で構成されるプロセスとだけ考えてしまうの では、脱ISO13407はできなくなってしまうし、不十分でもある。 エスノグラ フィックなアプローチやデザイン思考のアプローチについては、あの枠組みでも 良いのだがが、ライフサイクルの人間中心設計という視点か らみると、 ISO13407はその一部を強調しているにすぎない。その意味で、ISO13407は実利用 経験を重視するユーザエクスペリエンスの 視点から見ても部分的なものに過ぎ ない。加えて、ユーザビリティはユーザエクスペリエンスに寄与する品質特性の ひとつでしかない。
もちろん視野を拡大すればそれでいいという訳ではない。視野を拡大すること で、それぞれの活動が薄まってしまっては意味がないからだ。しかし、 多様な 関係者とはいいながら、人間中心設計を推進している人たちの多くはユーザビリ ティ関係者やデザイン関係者ウェブ関係者、それに人間工学関係 者に限られて いるといえる。したがって、人間科学や社会科学、それとシステム科学と情報科 学などの幅広い人材が参加することが必要である。
それは組織を構成する人材の水平展開といえるが、人材の垂直展開についても 考えるべきだろう。人間中心設計は、基本的には個人の活動ではなく、 組織的 な活動である。組織は個人を超えて継承されていかねばならない。そのためには 新人を採用して若手人材として登用する必要があるし、以前の若 手は中堅とし て、以前の中堅は中枢として活躍する自覚を持つべきだ。また以前の中枢は権限 委譲をしてリタイアし、顧問的な形で組織に関与する必要 がある。そうした世 代交代のなかで、適切な教育も必要になるし、自分の立ち位置に応じた自覚も必 要になる。人間中心設計も組織的活動である以上、 そのような世代交代をして いく覚悟と、20代や30代の有能な人材を育成し、中心に据えていくような方向性 が必要だといえるだろう。
冬休みにチベットを旅行しながら、こんなことを年頭所感として考えていた。
副理事長

篠原 稔和

早川 誠二
昨年度に開始された人間中心設計専門家の認定制度は、今年第2期を迎えていま す。1月7日には,応募が締め切られ2月から認定のための審査が始まります。 第2期では、昨年度のふり返りにもとづき人間中心設計のコンピタンスの見直し を行い、より人間中心設計専門家にふさわしい実践能力が求められるようになり ました。また、昨年12月には、受験、審査を予定されている方々に対して個別 に説明会を開催し、よりわかりやすい申請やぶれの少ない審査ができるよう努め ました。
認定人間中心設計専門家の認知度も徐々にですが高まっています。ある省庁で は、入札案件のRFP(Request For Proposal)に、検討チームに認定人間中心設 計専門家がいることが条件になっていました。今後、このようなケースが増えて くると思われます。人間中心設計に直接関連する業界の中での啓蒙もさることな がら、発注に関係する団体などへのこの制度の認知を高めてゆくことも重要に なってきます。
これまで、規格化/認定事業委員会が中心になって専門資格認定委員会を運営し てきましたが、今年は認定専門家自身がこの制度を維持、運営してゆけるように したいと考えています。第1期で認定された専門家の方々、今年3月に第2期と して認定される専門家の方々に多いに期待します。

山崎 和彦
HCD-Netも今年で6年目になりました。広報社会化事業部では、HCDとHCD-Netを会員のみならず、広く社会に知ってもらうために多様が活動をしてきました。HCD-Netサロンを代表とするイベントの開催やイベントへの参加、HCD-Netの広報活動としてのニュースレターやカタログなどの発信、そしてHCD-NetのWebサイトの運営などがあります。
今年の目標としては、これまでの活動をさらに充実継続しながら、次の5年間のやるべきことを検討してみたいと思います。特に、HCDライブラリーなどの出版化、HCDアワード(仮)などのように社会へ認知してもらう活動、HCD-Netの地域化促進、学生への普及化促進、教育分野への普及化促進、技術者への普及化促進など考えるべき方向性は多様にあると思います。そんなことを、皆さんとディスカッションして行きたいと思いますので、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
事務局長

鱗原 晴彦
「10年後に確実にHCDを普及させるためには、今からスタートしなければ10年後
は来ない。」
発起人の一人である前理事 高橋賢一氏の思いをこう伺ってから、早、5年と9ヶ
月が経過しました。
まさに、光陰矢の如しですが、そのスピードは年々加速していると実感しています。
理想像を見失うことなく、しかし、社会の変化に見合うHCDビジネスノウハウが 提供されてこそ、社会全体に寄与できると確信しています。その意味 で産業界 への普及啓発を目指したHCD-Netの存在意義は高く、会員の皆さまの活動のさら なる活性化を心よりお願いいたします。
理事

安藤 昌也

伊藤 潤
最近の小学校では、昔遊びという授業があり、小1の子供がコマ回しを始めました。
回ったり、回らなかったりの様子を見ながら久々に自分でもトライ!。久々なので、いろいろ思い出しながらの作業。ちょっと悩んだのが紐を右に巻くか左に巻くかです。
右手で持ってこう投げるのだから...と考えながら左巻きだ!とわかった私は何とか回せました。よく見ると右巻きにしている子供に、左に巻くんだよ!と教えてやらせたものの、すぐに上手く回るとは限らず、残念ながら、そのアドバイスは信用されませんでした。
でも、数日後、すっかり上手に回せるようになった子供の巻き方は左巻きでした。いつの間にかいろいろ試して左巻きの方がよいと覚えたようです。
さらに後日談が正月、田舎の実家でコマ回しをして遊んでいる時です。帰郷した義妹も参加したのですが、その投げ方を見てびっくり。右手で右巻きに合わせた投げ方だったからです。巻き方に適応させた投げ方があるんだ!ということに気づかされました。
さて、考えてわかる、試行錯誤で覚える、適応させる、これらの考え方の使い分けってユーザインタフェース(UI)を考える時に、よく話題になる話ですよね。
さて、これらの使い分けをどう考えるべきか?などという、UIに関する、よくある課題を専門家同士で議論する場があったらいいなと思いませんか?あるいは、HCDに関わる様々な手法について議論する場があったらいいなと思いませんか?
開発事業部では、そんな場を提供する場として手法SIGを開設しました。興味のある方は、ぜひ事務局まで問い合わせてください。お待ちしております。

辛島 光彦
明けましておめでとうございます。
東海大学の辛島です
本年も研究事業部担当理事として、安藤理事ともども微力ながら人間中心設計に関わる研究活動の推進に尽力したいと考え ております。
本年もよろしくお願い申し上げます。
昨年より人間中心設計専門家認定制度がスタートし、いよいよHCD-netの活動も本格的軌道に乗りつつあります。その中で 、人間中心設計に関わる研究活動の推進についても、毎年定期的に研究発表会を開催できるようになり、少しずつ前進できてい ると思っております。
ただ機構誌の研究論文数については残念ながら今一つ活性化できておりません。機構誌の投稿論文数や研究発表会の発表件 数を増やしていくことが、日本の人間中心設計活動の活性化に寄与するとともに、人間中心設計に関わる日本発の新たなコンセ プトやツールを世界に発信していくことの足がかりになると信じております。
なお本年は機構誌の活性化の一助とすべく、日本学術会議協力学術研究団体への登録にトライすることを予定しております 。 皆様には研究活動の推進活動のために、色々とお願い申し上げることもあるかと存じますが、昨年以上のご協力宜しくお願い申し上げます。

郷 健太郎

小林 正
近藤 朗

高橋 正明
専門家の普及努力
昨年から始まった「人間中心設計専門家認定制度」の運用が無事に一回りし て、今年も第二回のチャレンジ募集が始まって います。今年は、コンピタンス の適用を見直して第一回に比べてさらに人間中心設計専門家として必要な人材 にも焦点が当て られるはずです
しかし、「ニンゲンチュウシンセッケイ専門家」って何の専門家なのか?とい う基本的な理解をもっと普及させる必要があ ると思います。つまり実業界に於 いて、アカデミックな研究分野以外で企業が必ず必要とする人材なのか? ど ういう技術、 技法なのか? どういう企業がどのように導入しているのか? 他に具体的な導入事例は?等々、もっと身近な人材として広 く現場で理解さ れ、素直に導入努力ができるような状況を造り出す必要があると思います。
そのためには、広報手段の工夫やイベントなどの機会の増加はもちろんです が、先進的な人がすでに興味を持っていても自 分の会社で上司を説得できるよ うにするためのツールや多くのイベントなどが提供できないといけないでしょ う。また、当然 のことながら運営組織団体として安定してこのような活動が推 進できるような基盤強化の努力も必要です。活動目標と基盤強 化のバランスを 崩すと一気に崩壊する危険性も常にあります。各事業部ごとの活動成果と運営 組織としての各事業横並びの進 捗バランスを確実に統合して行けるような理事 会活動を充実する必要があると思います。

樽本 徹也
「ユーザビリティは開発予算の10%」――単なる"神話"に過ぎないという批判もありますが、開発現場では現実的な基準 値として意外と通用しています。ただ、デフレ傾向が続く昨今の日本においては、それは予算額の減少を意味してしまいます。
それに対抗する方法は2つあります。1つは予算額を死守することです。ただし、他のステークホルダーも同じ事を考える ので、結局、ドロドロとした"政治闘争"に発展しがちです。
もう1つは仕事の深さと幅を拡げることです。HCDは特にイノベーティブな製品開発に大きく貢献できます。リサーチ、プ ロトタイピング、テスティングといったHCD手法を駆使すれば、開発チームが絶えず直面する困難な意志決定を力強くサポート できます。
今の「役割」にこだわるのはやめましょう。それよりも自分の「スキル」を高めるべきです。そのスキルを総動員して開発 チームに大きく貢献できれば、予算は自然と後からついてくるものなのです。

長谷川 敦士

松原 幸行
HCD-Netも発足して早6年が経とうとしています。その間HCD活動の社会化や普及などHCDの啓蒙に寄与する活動もあり、またそうでない活動もありました。前者の一つはHCD-Netサロンの継続的な開催であり、後者は組織的な広報活動そのものが該当すると思います。どちらも自分が関わっているものですので、充実感と反省の両方をかみしめながら新年を迎えました。私が担当しているものの一つにニュースレターがあります。コラムの執筆をお願いする中で様々な出会いがあり、ニュースレターが会員の皆様との大切な絆の一つであるとの自覚の下、発行を継続しております。今年からは評議委員や一般会員の方にも直接コラム執筆をお願いしながら、このニュースレターを継続したいと思います。
さて、新年にあたり最初に行ったことですが、今年は「100の目標」というものにチャレンジしています。今年の目標を100項目掲げ、日々目標達成に向けて努力する、という目標管理を手っ取り早く可視化するうなものです。やってみると100件上げるのも大変でしたが、自分の興味が棚卸でき大変すっきりしています。そのような訳で、今年就活を始める若い方にもお勧めしたいと、ひそかに思っていることろです。
本年もどうぞよろしくお願いします。

山岡 俊樹

和井田 理科
企業活動は提供するモノやサービスをお客様に選んでいただき、買っていただき、 使っていただくことで成り立ちます。エコが叫ばれる昨今ではさらに使い続けてい ただくということも以前より重要になってきています。
HCDはこの全てをカバーする設計活動であると思います。
HCDの技術的な注目はより上流工程の手法に集まっていますが、実際に使い続けて いただくには、旧来からの地道なユーザビリティ改善活動が欠かせません。お客様 のおかれている環境は日々変わっており、お客様自身も変わってゆくので、常に「 今のお客様」で検証する必要があります。
しかし、企業の中にいると「コスト」「日程」「差別化」などの圧力でともすると 二の次になってしまいます。利用品質はまだいわゆる安全品質並みの必須品質にな りきれていないと感じます。
一企業の中では牛歩の進みになりがちな「人間中心」なモノ/サービス設計の考え 方を、HCD-Netがいろいろな人達と連携して潮流をつくり、裾野を広げて押し流し ていけるくらいのものにできたらいいなと、野望を持って活動していきたいと思い ます。
監事

加藤 大三
HCD-netをご支援,ご賛同戴いている皆様,新年おめでとう御座います。
昨年度は人間中心設計の多数の専門家の方々が資格を取得致しました。 今年も多数の専門家の皆様が資格を取得し,資格制度のさらなる発展を期待しています。
私事ですが,昨年は勤務先を変更した為に,仕事で使用しているE-MAILアドレスを変更しました。 仕事でお付き合いをしている方々へは,勤務先や仕事の内容の変更とE-MAILアドレスの変更をE-MAILで通知して,E-MAILの遣 り取りはスムースに変更出来ました。
けれども,仕事上で必要な情報を遣り取りする為に,色々なWebsiteやMailingListに登録しているE-MAILアドレスを変更する のは大変な作業になりました。
特に,IDとPassWordで登録変更申請のページにログインしないといけないのですが,これが大変な作業でした。
セキュリティ面からはID,PWの全てを同じにしてしまうのは問題が発生する可能性が大きいので,色々と文字列を変え ていますが,それ等を思い出したり,記載したメモを探し出したりして,それぞれを間違いなく入力する「事」が大変でした。
登録先の組織やMailingListでのE-MAILアドレスの変更方法が千差万別で,中には変更の確認用のwebpageアドレスがE-MAILで 送られて来るのを待って,変更手続きをしないといけないwebpageもありました。
E-MAILの送付アドレスが変更前のアドレスの場合で,変更手続きをアドレスの変更後に行おうとした時は変更が出来ません でした。
仕方がないので,新規にIDとPWを登録し直し,旧アドレスは放置してしまいました。 人間中心設計の考え方や取り組みの概念はどんどん発展し進化して,より使い易く,まごつかないで入力が出来て,操作も簡単 化されてきています。
その一方で,インターネットで色々なwebpageから情報を得たり,自身の意見を発信するのを容易に出来る様にするのは,セ キュリティ面からは危険になる可能性があります。
現状では階層が多くて少しは使い難くても,セキュリティ面からは安全な方法を優先せざる得ない状況ですが,技術的な対 応策の発展などで容易で安全な方式が研究開発されて,インターネットがより安全で,なお且つ,使い易くなる事を期待してい ます。

