海外カンファレンス報告

  去る6月4日、5日に、オランダのアムステルダムにて、UX STRAT Europeカンファレンスが開催された。

 

UX STRAT EUROPE CONFERENCE

http://www.uxstrat.com/europe/

 

  UX STRATは、もともとLinkedInにてUX Strategy and Planningというグループを主催していたUXコンサルタントのPaul Bryan氏が、グループでのディスカッションを集まってやってしまおう、という趣旨で開始された、個人主催のカンファレンスである。2013年に第一回が北米で開催され、三年目となる今年は、北米に加えて欧州でも開催されることとなり、このUX STRAT Europeとなった。

  本カンファレンスは、上記の文脈があるため、いたずらに規模を追う想定はなく、毎回200人規模限定で参加者を募集している。また、本カンファレンスで得られた知見や内容をもとに、UX STRAT Masterclassというコースも開講している。

 

UX STRAT Masterclass

http://www.uxstrat.com/mc/

 

  そういったなかで、北米での盛り上がりを受けて、初の欧州の開催となるのが今回。ちなみに、今年も北米でも9月8日〜10日の日程で開催が予定されている。

 

UX STRAT USA

http://www.uxstrat.com/usa/

 

  前置きが長くなったが、サービスデザインの人気も高い欧州で、UX戦略がどういった文脈で受け入れられているかを体感したかったため、筆者は今年は欧州バージョンに参加してみることにした。

会は基本的にはシングルトラックの2日にわたる日程で、講演と参加者をいくつかのグループにわけてのディスカッションとで構成されている。

 

詳しくはプログラムを参照されたい。

 

UX STRAT Europe Program

http://www.uxstrat.com/europe/program

 

  参加してみての全体的な所感としては、欧州では米国と比較しても遜色がなくUXおよびUX戦略についてのビジネス活用は進んでおり、数年前に感じた米国とのギャップ感はほぼ感じなかった。その意味で、逆に米国でのUXの議論は、新しいトピックを追う時代から企業への最適な適用を推進する時代に移ったということがいえるだろう。

  では、いくつか興味深いトピックを紹介しよう。まず、UX(User Experience)とCX(Customer Experience)について明確な使い分けがなされていたことがあげられる。具体的には企業から見て、総合的な顧客の体験がCXで、そのなかでのデジタル体験についてをUXと識別していた(イメージ的にはUXはCXのサブセットになっている)。何人かのスピーカーのプレゼンテーションのなかでこのことが言及されており、参加者の共通認識として共有されていた。筆者の知る限り、日本でも北米でもUXとCXの使い分けはあいまいであり、ほぼ同じ意味を差していることが多い。善し悪しはともかく、こういった用語の定義に明確なコンセンサスが生まれることは、プロセス改善や手法の普及においては生産的な効果が見込めることが多い。個人的にはUXをデジタルと限定してしまうことには抵抗を感じているが、このあたりはHCD-Netの会員のみなさんからのご意見もうかがってみたい。

  また、米国でのこういったカンファレンスに比べて、製造業からの参加者が多く見られたことがあげられる。具体的には、フィリップス、BMW、フォルクスワーゲンといった企業のインハウスおよび専属コンサルタントの人々と直接議論を行うことができた。こういったさまざまな事業者がこういった場に会する状況は、日本の状況と比較的近いと感じた。前述の通り、ここではデジタル体験が主眼となって扱われていたが、同じ目線で製造業とサービス事業者とでディスカッションがなされている様子は日本でも参考にすべきと感じた。

  ちなみに、米国では別にUX Strategies Summitというカンファレンスも6月に開催された。双方の参加者による、カンファレンスの報告会を以下の日程にて開催する。残念ながら参加チケットは売り切れてしまっているが、両者を比較したレポートなどは追って報告する。

 

UX STRAT & UX Strategies Summit Redux開催のお知らせ

http://www.concentinc.jp/seminar/2015/06/ux-strat-ux-strategies-summit-redux/

 


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