HCDコラム

  「共感」という言葉が大好きである。もちろん相互理解無くして共感は得られないと思うが、単純な双方向でなくその場全体を共有するニュアンスと、共感という言 葉の持つポジティブな響きが好きだ。これまで関わらせて頂いたモノ作りやUIデザインの局面でも、共感という言葉は自分自身を動かすエンジンの役割を担ってきてくれたように思う。

  私事になるが、思う所あって昨年より東洋医療系の専門学校夜間部に通っている。人間や自然をホリスティック(全体的、包括的)に捉える東洋思想/東洋医学の世界観に魅かれたことがこの世界に入門する大きなきっかけの一つであるが、共感や共生、共時性など「共」の付く言葉は東洋思想にも繋がる概念のように思う。先日学校の臨床心理学という授業の中で、K.ロジャーズのクライアント中心療法/人間中心アプローチを初めて学ぶ機会を得た。ロジャーズがカウンセ ラーに必要な条件として挙げている「無条件の肯定的関心」「共感的理解」「自己一致」の3つはHCDにおけるユーザー理解の局面にも通じるものであり、思わずテンションが上がった。達人のユーザーインタビューに癒し効果があると言われるのも充分納得できる。

  東洋医学では望診(顔色や舌の状態などを目で観察する)・聞診(声や話し方・咳の音を聞く、口臭や体臭をかぐ)・問診(さまざまな質問をして情報を集める)・切診(脈や腹部に触れて状態を調べる)などの診察や鍼灸按摩などの施術を通じ、五感を駆使して患者さんに向き合うが、ロジャーズの3条件は臨床の現場以外にも人と接するときに重要な視座を与えてくれると思う。これからも「共感」という言葉を生活やビジネスの局面で大事にしていきたいと考える今日この頃である。

ショートコラム Vol.112 


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。