HCDコラム

会社員になって35年になる。ふと気づくと、働くことが中心の生活になっていて、朝、何かやりたいことがあっても、電車に乗るために、それをあきらめて駅に向かう。見たい展覧会があっても、休日にしか行かれないし、休日は混んでいるので行きたくない。というような生活が当たり前になっていた。

60歳が視野に入ってきて、何のために働いているんだっけ、と立ち止まる機会が訪れた。いろんなことを後回しにして、働くことを優先してきたが、それでいいのか私、と心の中の何かが問いかけてきたのだ。

もっと自由に、24時間を使ってもいいのではないのか。毎日の生活を大切なものとして、もっと丁寧に扱うべきではないのか。急に60歳になるわけではなく、毎年1歳ずつ年を取るのだから、仕事への想いも少しずつフェイドアウトさせて、その分生活を楽しもうと思うようになった。

そもそも、結婚もせず、気ままに生きてきたはずなので、好きで仕事中心の生活をしてきたのだと思う。それだけ仕事が楽しかったに違いない。よく自己紹介では、「美人採用の受付嬢」としてスタートしました、と冗談めかして言うが、事実私の初めての仕事はショールームの受付だった。プリントゴッコが好きで理想科学に入社したのだが、新橋駅前ビルのショールームで、来客を取り次ぎや、リソグラフのデモンストレーションをしていたのである。その後、外回りの営業などを経験し、念願のプリントゴッコの部署に配属になるまで5年くらいかかった。いろいろなチャンスに恵まれ、宣伝部で取説制作を覚え、開発本部に異動になり、1999年にHCDと出会うことになるのであった。ああ、楽しいサラリーマン生活だったなー。しかしこれからは、もっと生活を楽しもう。働くことは生活の一部にしなくてはならない。「ほとんど」や「第一優先」ではなくて、「一部」というポジショニングになっていただくのだ。

仕事の存在感が薄くなっても楽しく生活できるように準備を開始した。その第一弾が「家」である。木造平屋の小さな家を建築中だ。ロフトがあるので、雑魚寝なら10人くらい泊まれます。フェイスブックの友人を見ると、HCD関係で知り合った人が圧倒的に多い。もしよろしければ、会社を辞めてからもおつきあいください。そして、家にも遊びに来てね。地ビールと石窯ピザでお迎えしますので。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。