HCDコラム

阪神18年ぶりのリーグ優勝!!なかなか感動的な胴上げでした。岡田監督の「アレ」は今年の流行語大賞かもしれませんね。目標をネーミングすることでメンバーの士気を高める効果があることは、青山学院大学駅伝チームの原監督が毎年掲げる「○○大作戦」でも実績がありますし、企業でもプロジェクトのネーミングにより目標を明示することが重要であることは周知の通りですが「アレ」というのは肩の力が抜ける感じがしてとても良いです。

さて、今年のプロ野球、興味はクライマックスシリーズ~日本シリーズへ。CSでセパ共に関西のチームが優勝となれば、関西方面は、さぞ盛り上がることでしょう。そこから日本全体の元気につながれば良いですね。G党の私は今シーズン、虎ファンの皆様への羨望とリスペクトの気持ちを持ちながら、東京ドームに10数回通いました。球場での試合観戦は、非日常の体験ができる場としてワクワク感があります。私の場合はどちらかと言えば、日常であり、更に義務でもありますが、そんな私の状況を踏まえ、勝率5割を行ったり来たりとハッキリしない今年のジャイアンツのチーム状況でも球場での観戦を楽しいものとするために、人間中心設計の原則を適用したファンエクスペリエンスの向上について勝手に考えてみました。

先ず、球場観戦における最高の体験は、試合に勝つこと。しかも逆転サヨナラともなれば大興奮!周囲の知らない人達とハイタッチ、ハグとなり、笑顔あり、涙ありと最高の高揚感を味わえて、これに勝るものはありません。問題は負け試合です。先制を許し、失点を重ねている時のファン心理は「失望と悔しさ」「不満と批評」が最大化されます。この感情がファン同士で共有されて、球場全体に怒りの空気を生み出します。主催者は、このネガティブなファン心理に共感したサービス(イベント)を提供するべきです。「応援の継続による希望」を支援するアイデアが必要です。真のファンが挽回を期待してチームへの応援を必死に続ける後押しをして、ライトスタンドだけでなく、ホーム球場全体が逆転への雰囲気を作り出すのです。

しかし、どうにもならない完敗ムードの時は「諦めと現実逃避」という心理から、席を離れて球場内コンコースのグッズ販売店や飲食店に向かうことも。球場としては、こうしたファンのために、店員の接客の質に最も気を使う必要があります。飲食店の店員の手際が悪くて、長蛇の列ができて、そこで待たされるのは、ストレスを増幅させます。手際良く客をさばくのは勿論、試合状況を把握しながら対話する店員さんがいたら負けてもまた来ようという気にもなります。実際、球場内で重たいタンクを担いで、汗だくになって走り回っているビールなどの販売員さんの中には、絶妙な声掛けをしてくれる方がいて、心を和ませてくれます。グッズ販売店でのファン心理は勝っていれば、全てのグッズが魅了的に見えてなんでも欲しくなる一方、負けている時は値段が気になって買い控えてしまいます。負けている時間帯には、点差に応じた割引キャンペーンとか…どうでしょう。

プロ野球の運営は、ファンの支持に依存しています。チームやリーグは、ファンに合わせたマーケティング戦略を展開し、ファンエンゲージメントを高めるための施策を採用していますが重要なのは、ファンの心情に基づく意見や要望を尊重し、コミュニケーションを強化することです。人間中心設計はファン、選手、関係者のコンテクスト理解を起点として、「学びと改善」を繰り返し、プロ野球の魅力と質を向上させるために重要な要素です。UX、安全性、倫理的観点、選手育成まで、さまざまな側面で人間中心設計の原則を適用して、快適・安全・安心な観戦環境を提供することで、プロ野球が発展することを切に期待しております。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。