HCDコラム

昨年の夏、厳しい暑さの中で冷房の効いた部屋で長時間パソコンに向かって作業をした結果、目の疲れと肩の痛みに悩まされました。この経験が、私にウェルビーイングに対する関心を一層深めさせるきっかけとなりました。ウェルビーイングは、身体の健康だけでなく、精神的な満足感や社会的な幸福も含む広い概念です。この時期に合わせて、私はオンライン診療を初体験しました。
自宅で専門医のアドバイスを受けられるこのサービスは、デジタルの恩恵を象徴しています。従来のWebや電話による診療予約の手間がなくなり、クリニックに出向いて待合室での待つ時間も省けるようになりました。しかし、このサービスが真に人間中心のウェルビーイングを提供するためには、単なるテクノロジーの提供を超えたアプローチが必要だと感じました。そこで、ウェルビーイングと人間中心設計について広範囲にわたって文献を調べ、読み進めることで、ビッグデータ、AI、そして人間中心設計の本質的な役割を新しい角度から考察することができました。

デジタル技術の進化は私たちの生活を豊かにしていますが、それらがどのように生活の質を向上させるかが重要です。オンライン診療は、遠隔医療の提供を超え、患者の生活習慣や環境に合わせたパーソナライズされた医療ケアを実現する可能性を秘めているとも考えています。患者が日々の活動や食事をアプリで記録し、AIと医師がそれを分析することで、リアルタイムでパーソナライズされた健康指導が可能となり予防未病の対策に効果が見込めます。このインタラクティブな健康管理システムは、患者の自己管理能力を高め、健康成果を向上させることに寄与するだけでなく、増加傾向にある健康保険料の高騰にブレーキをかける効果も期待できます。

また、オンライン診療のインターフェースやユーザー体験設計は、様々な患者が直感的に繰り返し使えるように設計されることがサービス浸透の重要なポイントだと思っています。これにより、患者は自身の健康状態や治療計画をより深く理解し、医師とのコミュニケーションがスムーズになります。患者の不安を軽減し、治療への自発的な参加を促すことで、満足度を高めることができます。オンライン診療は、遠隔医療を超えて患者の生活に密着したサポートを提供するツールとして価値を高めています。テクノロジーの進歩と人間中心設計がさらに結びつくことで、私たちのウェルビーイングは新たな段階に進むでしょう。患者ひとりひとりの心に寄り添うHCDの精神が、私たちの豊かなウェルビーイングへの鍵となります。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。