HCDコラム

HCDをやれば、その事業は必ず儲かるということになれば、企業にHCDを導入するのに苦労は無いだろう。HCDはそもそも、その恩恵を受ける人間を中心にして、その人間が喜ぶモノ(ハード、ソフト)、サービスを提供しようとするものである。だから、HCDで創り出されたモノやサービスは、その対象となる人間には喜んで利用してもらえるはずで、それを提供する事業者は儲かるはずである。しかし多くの場合,必ずしもその通りには行かない。

うまく行かない原因は? HCDで創り出したと言っても、実際には対象とする人間が喜んで利用てもらえるものになってなかったということになる。HCDはUD(ユニバーサル・デザイン)やCS(カスタマー・サティスファクション)のような単なるスローガンではなく、その進め方と、各ステップで活用できる多くの手法が準備されている。HCDのプロセスと各種の手法を活用すればHCDを達成できるはずなのだが…。

HCDの課題解決対策には2つの策がある。一つは問題点解決型で、人間中心になってないこと(問題点)を見つけて取り除く。もう一つは利用する人間から見て、今迄の体験にない新たな魅力を提供する提案型である。問題点解決型のHCDのためには、HCDの手法がかなり有効に生かされるが、その結果は、利用者には当たり前のことをしてくれただけで、積極的に喜んでもらえる訳ではない。だから儲かるHCDにはなりにくい。儲かるHCDにするためには、提案型が求められている。もっと積極的に、今迄に無い新しい喜び感じてもらえるモノを新たに見つけて創り出す必要がある。

HCDには多くの手法が準備されているが、いくら手法を駆使しても、それらの手法を使えば必ず新たなモノを創り出せる訳ではない。HCDの手法に,誰がやっても,今迄に無いすばらしい体験を生み出せる手法があれば、UCDをやれば必ず儲かることになるのだが、そんな手法は残念ながら存在しない。新しいモノを生み出す元となるのは手法ではなく、その担当者自身の創造力に依存するものだからである。

儲かるHCDにするには、担当者個人として、あるいは組織として,創造性を発揮できる能力を身につけることが重要なポイントであろう。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。