HCDコラム

私はリードスペース株式会社で中小企業、官公庁や自治体、学校などへweb活用のコンサルティングから制作、運用支援のサービスを提供しています。現在は東京から移住して、地方を拠点に活動をしていますが、東京と比較して地方のHCDリテラシー格差を痛感しています。

具体的な話に入る前にたとえ話をします。平安時代に生きた紫式部の前でスマートフォンを使ったら「お主はもののけか!」と怪しまれるでしょう。現代ではスマートフォンは常識的なものですが、平安時代ではスマートフォンはもののけが使う極めて怪しいものと思われてしまいます。

地方ではHCDにおいてこれらと同様なことが起こっています。webサービスの企画・制作にはHCD(UX・UIデザイン)は常識です。東京では多くのプロジェクトでHCDが要件に含まれています。しかし、地方の場合はHCDを導入した企画をストレートにクライアントに伝えると、もののけ扱いされてしまいます。更にHCDを導入する分、従来工程より工数が増えることから費用は高くなるので、そのまま見積りを出すと、それはそれは凶悪なもののけ扱いをされてしまいます。

昨今、どの中小企業、官公庁や自治体、学校も予算を上げることは稀です。そのため、HCDを導入する工数(コスト)の超過分をどこで調整するかというと「請け負う企業の企業努力」になります。

何故このようなことが起こるのでしょうか。
それは、GAFAなどのビックテックがHCD観点で圧倒的に優れたサービス・プロダクトを広く普及していることが起因しているからと考えています。

GAFAが提供する優れたサービス・プロダクトは莫大な投資とそれにより実現できる質の高いHCDプロセスを経て生まれます。一般的なユーザーはサービス・プロダクトが生まれるプロセスに関心を持つことが少ないため、HCD観点で圧倒的に優れたサービス・プロダクトの品質が当たり前と錯覚します。そのため、HCDに投資が必要だと認識されず、興味・関心も持たれないため、HCDリテラシー格差は更に広がっていきます。

これらの問題を解決するためには、やはり地道な啓蒙活動だと考えます。最近、日本刀に興味を持ち日々勉強をしているのですが、日本古来から伝わる文化・技を残していくために様々な形で啓蒙活動がおこなわれています。私はHCDが更に日本に普及していくために日本刀と同様に様々な形の啓蒙活動が必要だと考えています。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。