HCDコラム

弊社UXPRESSではおかげさまで数多くの日本企業から北米を中心としたグローバルリサーチの依頼を頂くのですが、表題の問題は定量・定性問わずよく見受けられます。今回は定量調査の調査票作成を例に、事例を踏まえてご紹介したいと思います。

「グローバルリサーチにおける適切な選択肢数」
弊社ではクライアントの「知りたいこと」や「質問の意図」を正しく理解するため、英語版の調査票を作成する前に、必ずクライアント側に日本語版のたたき台を作成していただいていますが、多くの企業で海外の標準的な基準を超えた選択肢数となっています。

一例として、先日サポートさせて頂いたグローバル定量調査(日米、オンラインアンケート)では、所有デバイス(映像関連)についての複数選択式の質問で最大50弱、殆どの選択式で20以上の選択肢が提供されました。回答者が日本人であれば律義にすべての選択肢を確認し、真面目に回答してくれる方が多いかも知れませんが、残念ながら海外の被験者は日本人ほど辛抱強くありません。また、海外ではスマホで回答する被験者も多いため、多過ぎる選択肢は視認性の点からも問題があります。無効回答の増加が懸念されたので担当者の方に相談しましたが、今まで日本での調査で問題が出ていなかった事もあり、中々ご納得いただけませんでした。そのため敢えて調査票はそのままで小規模の予備調査を行いました。結果はAIによる「真剣に回答した場合の予測平均時間」の半分の回答時間となり、無効回答が多いことがデータとして証明され、変更について先方にもご理解いただくことができました。

デモグラフィックに関する質問などの絶対数が決まっているケースを除き、Sheena IyengarやBarry Schwartzをはじめとした海外の研究者達の間では、脳の負担を軽減し有効な回答を得るには、10以下の選択肢が望ましいとされています。有効なリサーチの大前提は、被験者に質問(者)の意図が正しく伝わり、且つ真剣に回答してもらう事です。グローバルリサーチでは、異なる国の被験者が参加するため、日本人被験者を基準に調査設計を行うと上手くいかないケースが多々あります。謝礼をもらって回答するのだから真面目に回答して当たり前と考えがちですが、日本と海外ではその前提が異なります。特に円安で海外でのリサーチが割高な現在、限られた機会を活かそうと他部署からの要望も多く質問数・選択肢とも増えがちですが、自分本位にならず「被験者の負担を減らし、シンプルで分かりやすいリサーチにできるか」が鍵となります。国内調査よりも更にLess is moreを意識した調査設計が重要です。


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HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。