HCDコラム

私の所属するサービスデザイン部は約20名の組織で、若手が6名を占めます。 これからの組織拡大を見据え、彼らの自律を支援することは、マネジメントを担う私にとって重要なミッションです。
一方、テレワーク中心の環境で、私はあるもどかしさを感じていました。 オフィスなら見えた「ため息」や「表情の陰り」が見えず、育成に欠かせない“観察”の解像度が下がっているのでは...と不安だったのです。

「顧客体験をデザインする私たちが、仲間の体験をデザインできていないのでは?」 この問いから、組織運営にHCD(人間中心設計)を取り入れ、育成の仕組みを再構築しました。

① 観察・分析:見えなくなった「行間」を読む
きっかけは若手との1on1での「報告タイミングを逃す」「一日がタスクだけで終わる」といった声でした。彼らの視点(ユーザー視点)で観察すると、リモートワークで業務の「行間」にある感情の吐き出し口が失われていると気づきました。 課題は個人のスキルではなく、「孤立を生みやすい体験設計の不備」にあると定義しました。

② 共創・実装:管理ではなく「対話」のためのbot
解決策としてSlackのチェックインbotを導入。こだわったのは「問い」をメンバーと共創することです。 一方的な管理は心理的安全性も損なうと考えたからです。朝は「今日の気分」、夕方は「仲間のナイストライ」など、あえて“気持ち”も共有できる項目を盛り込みました。 これは業務効率化であると同時に、組織のエンゲージメントを高めるための「体験設計」でもあります。

③ 評価:離れていても「気配」を感じられる場に
運用後、称賛スタンプや弱音の共有といった“人間らしいリズム”が生まれました。私自身、コンディションを把握しやすくなり、若手自身が「自分の状態を客観視する」習慣のきっかけになったと感じています。

組織デザインというHCD
重要だったのは起点の“観察”と“共創”でした。 リモートでの観察は、デジタル上の断片を拾い集める行為へ変化しています。それをメンバーと再構成することが、チームの体験デザインにつながるのです。

この取り組みは単なる効率化ではなく、“人と人がつながるための体験設計”です。 リモートでもHCDの視点で文化はデザイン可能だと実感しています。

もし「どんなチーム?」と興味を持ってくださったなら、ぜひnoteも覗いてみてください。 メンバーの「生の声」から、私たちの空気感を感じていただけるはずです。

▼詳細はこちら
KDDIアジャイル開発センター株式会社 note https://note.com/kddi_agile


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。