HCDコラム

 HCD手法を実務において適用できるような組織にしたいけれども、エンジニアなど現場メンバーの知識が欠けている、行なうべきプロセスが欠けているなどでHCD手法の適用が現実には困難といったケースは多いのではないでしょうか。

  そんな場合、HCD専門家の方々はどんな風に頑張るかというと、例えば

①啓蒙イベントやガイドラインを作るなどして関係者の知識習得を支援

②ガイドラインを作る、行うべくプロセスを追加するなど欠損を埋める仕組みづくり

③どうにも足りない部分はHCD専門家自らが補う役割を果たす。

などでしょうか。

  HCD専門家の頑張りは必ず効果を上げますが、大きな組織の場合は、数に限りのあるHCD専門家では対応範囲に限界があってなどという悩みを抱えることがありそうです。

  私個人としても過去は上記のように頑張ってきました。ある活動(注)をきっかけに、以下のアプローチに変わってきました。

A:知識やプロセスが欠けている事は、まずは制約条件として受容する

B:既に確立されている既存の商品開発プロセスを最大限活用する

C:HCD専門家ではなく、エンジニアや品質部門など当事者が動くように仕掛ける

D:理想的ではないが、より良いUIやUXが実現する

  具体的には、より良いUIやUXが実現するための要求をHCDの専門的概念で提示するのでなく、既存のモノづくりプロセスで使われている要求事項に翻訳して埋め込むことでHCD手法を用いて達成したかった成果を得られるようにしていくということです。

  特に、実績ある既存プロセスを持つが故にHCDの定着が難しい企業においては有効なアプローチではないでしょうか。

 

(注)
ある活動というのは第1回 HCDベストプラクティスアウォード(2015) 優秀賞を受賞した「使いやすさの品質目標値を定義した全社的な品質管理」です。使いやすさを数値化して、品質目標の一つに盛り込んだところ、既存の品質管理の仕組みが機能し、仕組みを担っている品質部門やエンジニアが自身の責務として行動し目標の使いやすさが確実に達成できた。その一方でHCD専門家の出番が大きく減った、という経験をしました。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。