HCD-Netからのお知らせ

本コーナーでは、ユーザーを意図しない意思決定へと誘導し、企業にとって都合のよい結果となるようにする「ダークパターン」について、株式会社コンセントで収集している国内外の動きやイベントなどの情報の一部を抜粋してお届けしています。

■公正取引委員会、経済産業省「スマホソフトウェア競争促進法」に関する一部改正の政令等の公表(2025年7月29日)

今年2025年12月18日に全面施行される「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(略称:スマホソフトウェア競争促進法)。その施行に伴って必要となる関係政令等を整備するために、公正取引委員会と経済産業省とが募集していた関係各方面からの意見と、その意見の検討を通して一部変更、法制的修正がされた原案が、7月29日に公表されました。

スマホソフトウェア競争促進法は、スマートフォンが生活や経済活動の基盤となる中で、その利用に必要となるモバイルOSやアプリストア、ブラウザ、検索エンジンといった特定ソフトウェアの提供を行う事業者が、少数の有力な事業者による寡占状態となっていることから生じる課題を背景に昨年6月に成立された法律で、競争を通じた多様な主体によるイノベーションの活性化と、その結果生まれる多様なサービスを消費者が選択でき恩恵を享受できるように、競争関係を整備するものです。

特定ソフトウェアの提供等を行う事業者のうち、一定の条件のもとで公正取引委員会が指定する「指定事業者」を対象に禁止事項や遵守事項が定められています。第6条「不当に差別的な取扱いその他の不公正な取扱いの禁止」では、指定事業者による個別ソフトウェアに対する審査について記載されており、審査項目やその運用において「不当に差別的な取扱いその他の不公正な取扱い」が行われれば第6条に違反となる一方、審査自体は第6条に違反するものではないとされています。違反しない審査項目の観点として、サイバーセキュリティの確保や公序良俗とともに、「いわゆるダークパターンの防止」が明記されています。

7月29日に公表された関係各方面からの意見概要の中で、ダークパターンに関するものもいくつか見られ、その意見に対する公正取引委員会の考え方が資料の中で示されています。

▷(令和7年7月29日)スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律第三条第一項の事業の規模を定める政令等の一部を改正する政令等について|公正取引委員会、経済産業省 https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/jul/250729_smartphone.html

▷(令和7年5月15日)「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律第三条第一項の事業の規模を定める政令等の一部を改正する政令(案)」等に対する意見募集について|公正取引委員会、経済産業省 https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/may/250515_publiccomment.html
 
消費者委員会、消費者法制度のパラダイムシフトに関する報告書をとりまとめ、内閣総理大臣へ答申
(2025年7月9日)

内閣府 消費者委員会は「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」の報告書をとりまとめ、内閣総理大臣に答申しました。

従前の消費者法制度では、「消費者と事業者間の情報・交渉力格差を是正すれば、“強い個人による自由な意思決定”ができ、それが幸福な選択・社会的な幸福の最大化に繋がる」という考え方を基盤に各種対処がなされています。しかしながら、超高齢化やデジタル化の発展、技術革新を背景に、誰もが単独で十全な意思決定をすることが一層困難となりトラブルや危害にさらされる可能性が高まっている現代では、格差是正に加え、「消費者ならば誰しもが多様な脆弱性を有する」という認識を基礎に置き、既存の枠組みに捉われずに抜本的・網羅的に消費者法制度のパラダイムシフトを進めるべき、ということが報告書で提言されています。

この脆弱性に関するものとして、ダークパターンについて「目的達成のために継続的に開発されることで、事業者の主観的な意図にかかわらず“消費者の脆弱性”を利用・作出する可能性がある」と本報告書の中で指摘されています。

また規律の対象・射程として、有償の取引においては「消える」「費やす」という原義としての「消費」の場面、すなわち消費者が自らの情報や時間、アテンションを提供・消費させられているということへの対処や、脆弱性を前提とした実効性の高い規律の在り方として、事業者の態度や消費者にとってのリスクに応じて、悪質なものについて厳格な規制により対処するハードなものから、取引環境の整備に向けた事業者努力を促し優れた取り組みを称揚するソフトなものまで、さまざまなものを広く視野に入れ、規律手法にグラデーションを設けることの重要性などが示唆されています。

▷消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会報告書(PDF形式:827KB) 
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2025/doc/202507_para_houkoku1.pdf 

▷消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会報告書(概要)(PDF形式:1,342KB)  
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2025/doc/202507_para_houkoku2.pdf 

■フランスDGCCRFが、SHEINの欺瞞的商法に対して4,000万ユーロの罰金を科す(2025年7月3日)
フランスの消費者法を担当する競争・消費・不正防止総局(DGCCRF)は、欺瞞的商法を行ったとして
ファストファッション大手SHEINに対し4,000万ユーロ(7月3日発表時点の為替レートで約68億円)の罰金を科し、SHEINの運営を担うInfinite Style E-Commerce Co. Ltd.(ISEL)が受け入れたことが発表されました。

この発表は、DGCCRFが2022年10月1日から2023年8月31日までの間に同ブランドの値下げの実態について調査した結果に基づくものです。フランスの値下げ告知に関する規則では、基準価格をプロモーション開始前の30日間の最低価格と定められているところ、値下げ前に特定の価格を引き上げるなどが行われており、調査した商品のうち57%は値下げがなく、19%は広告よりも少ない値下げとなっており、11%は値上げであったとされています。規定に違反し、消費者に実際よりもお得な印象を与えていることが指摘されています。

また同ブランドのウェブサイト上でうたわれている環境に関するメッセージ、特に温室効果ガスの排出量を25%削減することで環境への影響を抑える責任ある企業であることを示すメッセージを正当化できていなかったことについても言及されています。

▷ DGCCRF プレスリリース(2025年7月3日)(PDF形式)
https://www.economie.gouv.fr/files/files/directions_services/dgccrf/media-document/cp-dgccrf-SHEIN-sanctionne-amende-40millions.pdf

■競争政策研究センター「ダークパターンを巡る競争政策及び独占禁止法上の論点」(2025年5月29日)
公正取引委員会 競争政策研究センターが、ダークパターンを巡る競争政策及び独占禁止法の論点に関する調査研究を行い、その結果をまとめたディスカッションペーパーを公開しました。

ダークパターンの定義や類型の他、EUやシカゴ大学、OECDで行われたダークパターンの効果についての実験例とその結果、特定商取引法や景品表示法をはじめダークパターン規制につながる法令とその措置事例や使用防止に向けた民間の取り組みといった国内の動き、米国・欧州・韓国におけるダークパターン規制を巡る動向がまとめられています。

また、ダークパターンを使用する業者が、使用しない業者に対して競争上優位に立つ可能性があり、期待される自浄作用も次々に新しい商品が投入される市場においては限定的である等、ダークパターンによる競争政策上の懸念と論点が考察されています。さらにその懸念に対して、現行の独占禁止法でいかに対処し得るか、ダークパターンの7つの類型ごとに独占禁止法で禁止されている各行為類型の関係が整理されています。

▷ディスカッションペーパー「ダークパターンを巡る競争政策及び独占禁止法上の論点」
https://www.jftc.go.jp/cprc/reports/disucussionpapers/r7/index_files/CPDP-101-J.pdf

■欧州消費者保護団体BEUCが、Sheinがダークパターンを使用しているとして、欧州委員会等に苦情申し立て(2025年6月5日)
欧州の消費者保護団体のBEUCが、21カ国25の会員とともに、中国のオンラインファストファッション小売業者であるSheinがダークパターンを使用しているとして、欧州委員会および欧州の消費者保護当局に対して苦情申し立てを行いました。

BEUCは、Sheinに対して「コンファーム・シェイミイング(羞恥心の植え付け)」「無限スクロール」「ナギング(執拗な繰り返し)」などの使用中止の要請をするよう求めています。またSheinが消費者に繰り返し表示している「在庫僅少メッセージ」や「カウントダウンタイマー」等について、それらが真実であり信頼できる情報に基づいたものであることを示す証拠の開示を要求し、立証できない場合はこれらの使用を中止するよう要請することも要求しています。

プレスリリースとともに報告書「ファストファッション大手SHEINはいかにしてダークパターンを使い、過剰消費を推し進めるか?」も公開し、ファストファッションの加速による消費者の衣料購入行動の変化やダークパターンが及ぼす影響についての考察とともに、BEUCの各国会員が行ったSheinのウェブサイトとモバイルアプリを対象とした調査結果や、EUの法令である不公正取引方法指令(UCPD)のダークパターン問題への適用の可能性についての洞察などをまとめています。

▷プレスリリース「Consumer groups file complaint against SHEIN for dark patterns fuelling over-consumption」(2025年6月5日)
https://www.beuc.eu/press-release/consumer-groups-file-complaint-against-shein-dark-patterns-fuelling-over-consumption

▷報告書「How fast fashion giant SHEIN uses dark patterns to push over-consumption」
https://www.beuc.eu/sites/default/files/publications/BEUC-X-2025-051_How_fast_fashion_giant_SHEIN_uses_dark_patterns.pdf

■研究論文「動画広告における打消し表示の文字サイズが視線停留と記憶に及ぼす影響」
(北海道大学大学院文学研究院 河原純一郎教授、中京大学心理学部 伊藤資浩任期制講師)
※2025年3月10日『心理学研究』掲載

例えば「通常価格から30%割引」といったような魅力的な内容を訴求する強調表示に対して、「30%割引は会員限定」といった強調表示の条件等を記載する「打消し表示」。動画広告におけるこの「打消し表示」の文字サイズが、視聴者の視線停留時間と意識的想起・再認に及ぼす影響について研究された内容がまとめられている論文です。

研究結果からは、打消し表示の文字サイズを拡大することで視線停留時間や再認成績の改善が一部で見られたものの、その効果は広告内容等に依存する限定的なものであり、文字サイズを拡大することが必ずしも打消し表示への安定した注視の誘導や表示内容の記憶(特に意識的想起)を保証しないことが明らかになったことが考察されています。また、「打消し表示の認識において視聴者にいかに注視させるかがポイントになる」ということも示唆されています。

▷研究論文
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_96.24004/_pdf/-char/ja  

■JIPDEC「デジタル社会における消費者意識調査2025」(2025年4月24日)
個人情報やプライバシー、生成AIやAIエージェント、ダークパターンなど、デジタル社会で注目されている課題への意識や実態を探るため、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が全国の18歳から70代の男女を対象に実施した調査の結果が公開されています。

ダークパターンについては、遭遇した際に、購入・登録・問い合わせに関してどのような「対応」をとったのかと、どのような「気持ち」を抱くかについて調査した内容が分類例ごとにまとめられています。

▷プレスリリース
https://www.jipdec.or.jp/news/pressrelease/20250424.html


※本コーナーでご紹介している記事のうち日本語以外で書かれているものは、機械翻訳による和訳をもとに要約しています。もし誤訳がございましたらお知らせいただけますと助かります。