HCDコラム

ご存知のようにHCD—Netでは論文誌を刊行しております。お陰様で投稿論文数も増加して参りました。一方で非常に興味深い研究内容自体にも関わらず、論文の体裁に起因して掲載可とならないケースが散見されるようになりました。これは論文投稿経験が少ない方にとってどのように論文を構成、執筆すれば良いかの情報が少ないことが一因になっているように思われます。そこで査読の際の査読者が気にしている基本的なポイントについてお知らせしようと思います。

まず論文が論文誌の対象としているテーマにマッチしているか、研究に有用性が見られるか、研究に新規性や独自性が見られるか、論文として適性であるかという4点がポイントです。詳細については論文を投稿する際にご提出いただく論文審査申込書に記載されておりますのでご確認ください。

加えて論文の構成には基本形のようなものがあります。1.はじめに、2.研究方法、3.結果、4.考察、5.まとめといった章立てが基本形です。「はじめに」では、発表しようと思っている研究を取り巻く背景を説明することにより研究の必要性を述べるとともに、関連研究を挙げることにより研究の新規性や独自性を示した上で、研究目的を記載します。「研究方法」では研究目的を達成するために行った実験、シミュレーション、調査などの方法を、読者がその方法を再現できるように記載します。「結果」では前章の方法によって得られた結果を記載します。研究目的が達成できているかどうかが判断される結果ですので、目的と関連のある結果を示すとともに、都合の良い結果のみを記載することはしないことが重要です。「考察」では研究目的が如何に達成できているかについて考察を行いますが、その際に著者の主観に基づいた考察のみを展開するのではなく、根拠となるようなデータに基づいて、定量的、かつ/または、定性的に考察することも重要です。人間工学の分野では通常、統計的分析結果に基づいて考察がなされます。「まとめ」では、研究目的と実施した研究内容、結論を簡潔に述べます。この章で新たな考察を展開することは適当ではありません。以上が基本形でアレンジして頂いても問題ありませんが、基本形をご理解頂いた上でご執筆いただくと、研究内容以外の理由で査読者が掲載不可の判断を下さらずを得ない可能性を低減できると思います。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。