HCDコラム

以前、家電製品の研究開発をしていた時に出会った、調理・料理の世界でHCDを実践されている方のエピソードをご紹介します。

開発時、著名なシェフに調理のアドバイスを頂いたことがありました。そのシェフは調理料理教室を営まれている傍ら、コンサルティング等も実施されており、失敗しないための低温調理等、ロジカルクッキングを提唱されています。
また、料理レシピに記載されている”少々”や”適量”というのは、経験を積んだシェフであれば分かるが、一般の人にはその加減が分からない、調理の度に味が変わったりしているのを何とかしたい、という思いを持っておられました。少々や適量を数字にし、家庭でも何度も同じ味に仕上げることが出来る調理を研究されておられます。

料理教室では、どのようなことに気を付けてお教えされているのですか?とお聞きしました。料理教室の生徒さんに満足して帰って頂くために、以下の取り組みをしておられるとのことでした。

①料理教室で教える調理法、手順を含めたレシピを作成
②料理教室で生徒さんにレシピ通りに作ってもらう
③生徒さんの行動を観察し、作りにくそうとか、上手く伝わってないとかを聞く
④生徒さんの行動、聞いた感想を分析し、レシピを修正
⑤修正したレシピで、再度募集して生徒さんに実施してもらう

この①~⑤のサイクルを何度も何度も回して、生徒さんが家でも同じ味を確実に再現できるようにすること、また生徒さんの期待値は常に上がっていくため、その期待値にどうやって追い付くかを考えた教え方や、レシピを考案していると言われておりました。
実際に作るのは生徒さんで、生徒さんが作れるものにしないといけない、もちろん調理結果にはこだわって、という事でした。

シェフはHCDという言葉をご存じありませんでしたが、シェフが実施されていることは、レシピを設計し、そのレシピをユーザーテストして、その結果を分析して改善する、HCDプロセスに通じている活動をされていると感じました。どのような世界においても、HCDの考え方・プロセスは有効であると、改めて認識した次第です。

最後に、告知をさせて頂きます。私はHCD-Net関西支部にも関わらせていただいております。
HCD-Net関西支部では、9月7日(土)にグランフロント大阪 ナレッジサロンにて、HCD-Net関西フォーラムを開催します。午前中はワークショップ、午後は著名な方々にご講演頂きます。上記で紹介したシェフにもご登壇いただきますので、是非ご参加ください!


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。