HCDコラム

COVID-19による社会不安の中、入手困難となっているマスクを巡った横浜での流血騒ぎ、デマ拡散による日用品の買い占めなど、露わになった人類のエゴを尻目に、ウイルスは未だ収束の気配がなく感染拡大の一途を辿っている。

一方で、SNSには人々を勇気づける慈愛に満ちたスレッドがいくつも立ち並ぶ。家電メーカーが専門外のマスク製造を通した医療従事者の現場支援に名乗りをあげ、東京都はCOVID-19向けサイトの開発ソースコードをGitHub上に公開し、日本各地の有志が地域ごとの情報提供サイトをスピーディーに構築する手助けをするなど、枠を超えた心温まる協働も見られる。

振り返れば、こうした地球規模の未曾有の経験を過去幾度となく人類は乗り越え、その度に社会構造をデザインしてきた。20世紀後半の地球環境問題は、市民のボランティア活動やNPO法人の活躍を通してより身近なものとして社会的に認知され、1997年京都議定書の採択を皮切りに政府主導のチームマイナス6%プロジェクトも勢いづいた。また2011年の東日本大震災を契機にクラウドファンディングが根付き始め、社会が一丸となって被災した東北復興に手を差し伸べたことは記憶に新しい。

しかしながら、世界を見れば相変わらず森林伐採は止まることなく、化石燃料に依存したエネルギー政策は変わらず、CO2排出量は年々増えている。興味深いことに、武漢を始めとする今回のロックダウン後の中国ではCO2排出量が25%以上減少し、大気汚染の軽減で5万から8万人弱の命が救われたという大変皮肉な試算がある。この数字はCOVID-19による同国死者数より遥かに多い。さらに着目すべき点は、COVID-19を始めとするウイルス感染での致死率は大気汚染レベルと正の相関関係にあることだ。

“歴史は繰り返す“というローマの歴史家クルチュウス=ルーフスの有名な言葉がある。残念ながら今後も別のパンデミックが猛威を振るう日が訪れるかもしれない。社会の根底をも揺るがす自然からの警鐘を一過性のものとせず、現在を教訓としアフター・コロナの世界をいかに創造できるか、人類が試されているように思えてならない。

物質的・経済的豊かさを追求し続けてきた人類にとって、現在の繁栄レベルを落とすことは容易ではないだろう。しかし人類には経験から学ぶ叡智がある。先に述べたように、隣人を想う互恵の精神も時代を超えて脈々と流れ続けている。今こそ、競争から共創へ、敵対から相互理解へ、ナショナリズムから地球との共生へと舵を切る絶好のタイミングではないだろうか?

テレワークの巣ごもりの中で、日常をゆっくり俯瞰し省察する時間を持てるようになった。
人類と地球にとって大切なこととは?
地球全体のエコシステムにおける、普段のデザインワークのあり方とは?
事業活動を通し、サスティナブルな社会実現のために求められる視座とは?

1日も早い終息を願いつつ、そんな思索に日々耽っている。


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