HCDコラム

最近、我が家では子犬を迎えた。
夫婦そろってリモートワークが適用されたのがきっかけだ。

コロナ禍は、ほぼ強制的に私たちの行動を変えた。ただ、悪い事ばかりではなく、当たり前の中にももっと別の選択肢がある事に気付けるという、ポジティブな一面もある。

ここ最近の私の仕事は、主に家電製品を操作するアプリのUXデザインである。照明、テレビ、エアコン、PC。世の中には実に様々な家電があるが、私たちはまず、これらを動作させるために、自分で何かしらのスイッチを押してきた。しかし、家電とはそういうもの、という固定概念はすでに崩れ始めている。声やジェスチャー、あるいは遠隔ロボット等を使って機器をコントロールする体験の考案は、アクセシビリティの観点や、コロナ禍で「非接触」がキーワードとなり、より加速している。

つまり、これからの私たちの仕事は、「当たり前」を変える必要があるのだ。

しかし、一度習慣化された「当たり前」の行為を変えるのは、かなり障壁が高い。この難問を打ち破り、ユーザーに新しい行為をしてもらうにはどうすればいいだろうか。

まずは、行動の「きっかけ」そのものを無くす事が考えられる。いつも照明をスイッチでONするなら、そのスイッチ自体を無くしてしまう、という方法。しかし、新しいソリューションを提供する側としては、今までの方法をやめて下さい!と声高に訴えるのが難しい場合も多い。やはり現実的には併用を考えるか、あくまでもユーザーに自発的に取り除いてもらいたい。万能ではなさそうだ。

次に他の「きっかけ」に乗っかる事。そもそも照明をONするタイミングが決まっているなら、人がスイッチを押す前につけてあければよい。その人独自の個性をデータで収集し、先回りして最適な答えを提案する仕組みは、AIやIoTで現実的になって来ている。玄関で靴を脱ぐ、「ただいま」と言う等、習慣化された行動の連続の中で私たちは生きている。この様な別の習慣をきっかけとして利用すれば、ユーザーも楽に目的を果たせる。いかに脳に負担を与えないか、そこがキモとなりそうだ。

いずれにしても、「それでも使いたい」と思ってもらえる価値を提供しなくてはならない。難しい挑戦だが、我が家の子犬の様に、人が諦めていた何かを提供できるかもしれない。
当たり前を見つけUpdateする、そういった仕事を楽しみたい。


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HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

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