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今年、約1年の育児休業を経て職場に復帰しました。
休業前は人間中心設計(HCD)を学びながらサービスデザインなどの実践に取り組んでいましたが、育児の中にもUXと通じる視点があると気づかされる出来事がありました。
子どもとの日々は、「遊び」という名のサービスを提供する連続です。
ですが、相手は言葉を持たないエンドユーザー。
反応もフィードバックもあいまいで、「見えない声」に向き合うプロセスは、まさにUXそのものだと感じます。
ある日、子どもが絵本を持って私の膝に座ってきました。表紙を開き、「読んであげよう」と声を出したとき、子どもはどこか納得のいかない表情で、私の手を押しのけました。
戸惑いながらも観察していると、子どもは絵本の端に手を伸ばし、自分でページをめくろうとしていました。
——読んでほしいのではなく、自分でめくりたかったのです。
私はページの端を少し摘み、「どうぞ」と差し出しました。すると子どもはうれしそうにページをめくり始めました。
絵本=読んであげるものと思い込んでいた私は、ニーズを取り違えていたのです。
観察し、小さなサインを拾い、試行錯誤する。そのプロセスがUXの基本であることを、改めて実感しました。
もうすぐ子どもは2歳。いわゆるイヤイヤ期に突入します。
これからまた、ホリスティックな視点が試される瞬間が増えるかもしれません。
それでも、育児という小さな実験場で得た気づきは、これからの実践においても大切なリマインダーになりそうです。
