HCDコラム

2024年に放送されたNHKのBSスペシャル「ジャパニーズ・ドリーム 〜ネパール人留学生たちの日本〜」は、強く私の心に残っている番組の一つです。
番組はネパールから日本にきている留学生数人の日々の生活や人生についてのドキュメンタリーです。私の大学にも多くのネパール人留学生がおり、彼らの姿と重ね合わせることで考えさせられることが多かったです。

 ネパールからの留学生が多いというと意外に思われる人も多いのですが、これは日本全体の傾向で、日本学生支援機構が実施している「外国人留学生在籍状況調査」によると、2024年の外国人留学生数の多い国・地域は、中国123,485人(対前年度比6.9%増)、ネパール64,816人(対前年度比71.1%増)、ベトナム40,323人(対前年度比11.0%増)、ということです。

番組を見て感じたのは大きく2つのことで、一つは生活面の苦労を実感しました。
・ネパールは産業が発達しておらず、若者が夢(ジャパニーズドリーム)を抱いて日本に渡ってくること
・来日のために借金を背負い、昼は学校、夜はバイトと寝る間を惜しんで働き、「睡眠を売って夢を買っている」と語ること
・故郷の家族には、憧れの姿のままでいるために、日本での苦労を伝えないこと

もう一つは、留学生という「安く、一時的な」労働力が日本を支えており、日本はその立場を利用していることです。
・450人もの外国人が倉庫の仕分けに一晩中働くことで物が届くようになっている、そのことを日本人は知らないのではないかと問いかけること
・日本語コンテストに入賞する優秀な学生が日本で希望する職につけず「自分達は日本経済に貢献している。でも居場所がない」とカナダへ移住したこと

 留学生との交流や指導は、熱心さやひたむきさに心を打たれることもある一方で、何か気持ちが通じないような壁を感じることも多いです。ですが、授業にでなかったり居眠りしたりするような学生には腹をたてるだけでなく、深夜のバイトで睡眠が足りないのだろうか、と想像できるようになったのは番組を通した気づきです。就職などの人生の局面に何か寄り添えることはないかとも考えるようになりました。NHKオンデマンドなどで見られますので、機会があればぜひご覧になってください。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。