HCDコラム

はじめまして。今年度より理事としてご一緒しています。私の専門は土木工学のうちの土木計画学と呼ばれる、社会基盤整備の構想、企画などの上流工程を担当する分野です。HCD-Netの会員としてはマイノリティな領域です。土木の世界にもHCDを導入したいと、主として研究から取り組んでいます。今日はそんな私の関心事「土木にもHCDを」をご紹介します。

土木とは、国全体の社会基盤(例えば、道路や港、鉄道などの交通施設、河川、上下水道、そして地域)の計画、整備を対象とする研究、事業の領域です。これまで、人間中心の正反対の技術中心に仕事が進められてきました。技術者の教育にはユーザー調査にはじまるHCDでの典型的な方法は含まれていません。ところがこの1、2年、HCDへの関心が高まってきているように感じます。社会基盤の最低レベルの充足が求められた時代では「とにかく作る」ことが求められましたが、すでに到来しつつある人口減少と社会基盤の老朽化の時代には、利害関係者の満足や合意、まさに人間中心も整備の対象や計画、方法の選択の判断基準と考えられるようになってきたのです。私の周りでは、技術者への教育の実践、ユーザー調査の改善、地域の交通計画や国土の長期計画などへの研究や試行ベースでの取り組みが見られます。

このような環境下では、みなさんに関わっていただきたいことは山のようにありそうです。土木分野にはHCDの教育を受けた人材はほとんどおらず、ましてや、HCDを適用する業務の経験を持つ人はほとんどいないためです。そして、私たちには土木とHCDのふたつのコミュニティを繋ぐことが求められています。研究事業部に設置された社会基盤SIG(小山田那由他主査)では今年度から、土木とHCDを繋ぐ「HCD-Net社会基盤ダイアログ」を、年4回のペースで開催します。土木分野のHCDに関連しそうな仕事に取り組む方に登壇いただき、HCD-Netの皆さんと対話を試みるものです。3ヶ月に1度のペースでの開催を予定しています。新しい領域でのHCDの展開をご一緒くださる仲間を増やすことが、私の最近の野望です。ぜひ、ご一緒くださいね。

HCDフォーラムのライトニングトークで「土木×HCD」と呟いたのが2015年。いよいよ時期到来かと、ワクワクしています。こんなことを考えながら、理事としての任期が始まりました。どうぞよろしくお願いします。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。