HCDコラム

仕事柄、日々「紙媒体」について考える機会が多くあります。世間では「ペーパーレスの時代が来る」と言われて久しいですが、実際にはどうでしょうか。確かに電子書籍や電子コミックの普及は著しく、コロナ禍をきっかけにリモートワークが広がったことで紙書類は減少傾向にあります。私自身もオンラインホワイトボードツールのmiroを業務で活用する機会が増えました。しかし、紙の書籍や雑誌は年々出版数が減っているものの、完全に姿を消したわけではありません。今後も紙媒体は一定の役割を果たし続けるだろうと感じています。

デジタル情報のメリットは明確です。編集や修正が容易で、離れた場所にいる人とも瞬時にデータを共有できるため、リモートワークが普及した現代では欠かせない存在です。一方で、デジタルツールの操作に慣れていない人にとっては、使いこなすのが難しい場合もあります。例えば、会社内でオンラインホワイトボードツールを使用したくても、不慣れな人が多いと、従来通り紙の付箋を使ってアイデア出しをする場面も多いのが現状です。しかし対面で付箋を使いながら議論した方がチームの一体感としては生まれやすいというのは多くの人が感じているのではないでしょうか。

会社以外でも同じようなことを感じる場面があります。私の体験ですが、マンションの管理組合で日程調整や投票を行う際、紙を使っています。Webサービスを使えば早いのになと思いますが、使い慣れていない方がいるため、時間はかかりますが紙でのやりとりなら確実に行えます。紙を使うことが一見ネガティブに感じますが、紙媒体には、多くの人が簡単に書き込めて、誰でもすぐにアクセスできるという手軽さがあります。情報を確実に届け、書き込んでもらえる点は紙ならではの大きな強みです。

このように、紙とデジタルにはそれぞれメリット・デメリットがあり、状況に応じて使い分けている方が多いのではないでしょうか。最近ではAI技術の進化により、紙からデジタルへの情報変換が格段にスムーズになりました。今後は、紙からデジタル、デジタルから紙への双方向の変換がさらに容易になり、紙(アナログ)とデジタルが混在してもスムーズに扱える時代が来るのではと期待しています。それぞれの強みを活かした新しい生活やワークスタイルが生まれるのではないかと考えています。


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HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。