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先日、夫とアイドルのミュージックビデオを見たあとに感想を話し合ったところ、お互いが注目していたポイントがまったく異なることに気がつきました。私は「振り付け、衣装、視覚的な演出」に注目していたのに対し、夫は「曲調や歌詞」に注目していたのです。お互いに注目した点は、相手にとってはあまり印象に残っておらず、同じ映像を見ていたにもかかわらず、これほど情報の受け取り方に違いがあるのかと驚きました。
詳しく話を聞いてみると、私は「どちらかというと視覚情報」を、夫は「圧倒的に聴覚情報」を重視して情報を収集していることがわかりました。視覚と聴覚の優先度には、想像以上に大きな個人差があるのだと気づかされました。さらに、周囲の人々を観察したり話を聞いたりする中で、次のような傾向が見えてきました。
▪️聴覚情報を優先する人
・雑談中、目を伏せることが多い
・何気ない駅構内の放送を聞き取っている
・読書が好き
・授業の聴講だけでも理解が深まりやすい
・意識しなくても周囲の会話が耳に入る
▪️視覚情報を優先する人
・雑談中、相手の仕草や表情を注視する
・駅構内の放送を環境音として認識している
・説明する際、脳内に図を思い浮かべる
・絵を描くことが得意
・授業は勉強のとっかかりであり、独自の方法で知識を定着させる
・周囲の会話に気を取られにくい
UIデザイナーやグラフィックデザイナーには、視覚情報を優先する人が多い印象を受けました。もちろん、これは私自身の経験や身近な人を対象にした観察にすぎず、個人的な解釈も含まれているかもしれませんが、何らかの参考にはなるのではないかと思います。
こうした個人差は、仕事や日常生活にも一定の影響を与えているように感じます。例えば、以下のような場面が挙げられます。
1.プレゼンテーション資料
プレゼンテーション資料は一般的に、1ページあたりの文字数を少なくすることが良いとされています。しかし、視覚情報を優先する人は、発表者の口頭による説明よりも、画面上の資料に記載された内容に注目する傾向があります。そのため、重要な情報は口頭だけでなく、スライド上にも明記するほうが効果的な場合があります。
2.仕事環境
周囲の会話が気になって集中できない人もいれば、適度な会話音があったほうが集中しやすい人もいます。
3.コミュニケーション
説明をする際、脳内に鮮明なイメージがある人は、それが相手にも伝わっているように感じてしまい、言葉による説明が不足してしまうことがあります。その結果、相手にうまく伝わらないことがあります。
このように、情報の受け取り方には大きな個人差があり、自分にとって最適な方法が他者にとっても最適であるとは限りません。
こうした違いに気づき意識することは、他者への理解を深めるだけでなく、人間中心設計の基本である「利用者の文脈を理解する」ことにもつながるのではないでしょうか。
