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開催レポート

※「HCDビジネスシンポジウム2024×HCD-Net AWARD 2023」の報告書はこちらからご覧ください。
(資料には動画が含まれていますので、ダウンロードしてからご覧ください。)

人間中心設計機構(HCD-Net)は、2024年3月8日に「人間中心のAI社会〜人とAIが協調するためのHCD〜」と題したシンポジウムを開催した。AIの応用がビジネスや生活を根本から塗り替える時代を目前に、HCDが果たすべき役割を改めて問い直す狙いである。当日は、東京都内の会場(明電舎大崎会館)とオンラインの配信を合わせて100名を超える参加者が集まり、密度の濃い講演と議論が1日中続いた。
 今回のシンポジウムは、HCD-Netが2022年に始めた「HCDビジネスシンポジウム」の第3回に当たる。DX(デジタル・トランスフォーメーション)実現の鍵とも言えるHCDマネジメントを取り上げた第2回の議論を受け継ぎ、AI時代に向けてHCDをどう発展させるかに焦点を当てた。冒頭の挨拶に立ったHCD-Net 理事 ビジネス支援事業部 事業部長の山口恒久氏は、「今回は前回の続編。DXを成し遂げるシステムにAIが搭載されつつある中、人間とAIが新しい価値を生むためには人間中心設計が重要だ」と語った。
 シンポジウムに「HCD-Net AWARD 2023」の表彰式を取り込んだのも今回の特徴である。HCD-Net AWARDは、HCD/UXデザイン活動における共有価値の高いナレッジやノウハウを募集・表彰する賞であり、シンポジウムの合間に2023年の受賞者を発表した。山口氏は「シンポジウムのタイトルは、『プラス(+)』や『アンド(&)』ではなく『掛ける(×)』HCD-Net AWARDとした」(山口氏)ことを強調。シンポジウムの眼目である製品やサービスの研究開発と、AWARDが象徴するHCDの実務の共創を、イベント全体の構成を通じて演出した格好である。
 シンポジウムでは、AIを用いた製品やサービスの研究開発や標準化に携わる計5名の専門家が登壇。午前の部は、安全性の確保や実運用を通じた改善といった足元を固める取り組みを、基調講演と対談形式の特別講演で取り上げた。午後一番のHCD-Net AWARDの授賞式を挟んで、新事業や技術を開発する視点から今後のAIの応用を展望する招待講演二つが続いた。最後に講演者が一堂に会したパネルディスカッションで、AI時代におけるHCDの組織や活動の課題を取り上げ、全体の議論を締め括った。


概要

HCDビジネスシンポジウムは、Society5.0が目指す「人間中心の社会」、DXレポート2.1が示す「顧客体験の創出/向上」を、デジタル産業界が具体的に推進できるようにするため、「人間中心デザインアプローチ(Human Centered Design 以下HCDと標記する)を広く普及、社会実装することを目的として、2022年より企画開催している産業界向けのイベントです。
近年、あらゆる分野でAIを活用した新しい価値提案が行われています。内閣府が掲げるSociety5.0 は、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)と定義されており、AIを活用した価値提案においても人間中心設計の重要性は、一層高まるものと考えられます。このような背景から、3回目となる今回のシンポジウムでは、「人間中心のAI社会」~人とAIが協調するためのHCD ~と題したシンポジウムを開催いたします。
また、今回はHCD/UXD活動における共有価値の高いナレッジ・ノウハウを表彰する「HCD-Net AWARD 2023」を併催します。受賞者の方にはパネルディスカッションにもご参加いただき、皆様と共に今回のテーマについて議論していただきます。

■日時: 2024年3月8日(金)9:30~16:45 (9:00受付開始)

■開催方法: 会場およびオンライン(Zoom)でのハイブリッド方式 
※見逃し配信あり(期間限定)

■会場: 明電舎大崎会館 3F ホール(東京都品川区大崎2-5-35)
https://maps.app.goo.gl/DecNd9x9yYKi6HwYA

■定員: 会場200名、オンライン100名(先着順)

■参加費:
・HCD-Net正会員/賛助会員/後援団体会員(会場参加・オンライン参加とも):3,000円
・一般(会場参加・オンライン参加とも):4,000円
・懇親会(希望者のみ):5,500円

■参加申込方法:以下サイトよりお申し込みをお願いします。
※Peatixへの登録が必要です。(懇親会のお申し込みもコチラから)
https://peatix.com/event/3841278/

■お申込期限:
講演会:3月7日(木)正午
懇親会:3月1日(金)正午

■主催:HCD-Netビジネス支援事業部、広報社会化事業部

■後援:
・デジタル庁
・一社)日本人間工学会(JES)
・独)情報処理推進機構(IPA)
・一社)重要生活機器連携セキュリティ協議会(CCDS)
・M2M・IoT研究会
・一社)人間中心社会共創機構(HCS-CC)
・一社)情報サービス産業協会(JISA)
・一社)組込みシステム技術協会(JASA)
・一社)ディペンダビリティ技術推進協会(DEOS)

プログラム詳細

9:00:受付開始

9:30:開会の挨拶

                                                  


9:40:基調講演「人と機械とAIの協調安全を考える」

<講演者>中坊 嘉宏氏
(国立研究開発法人産業技術総合研究所 インダストリアルCPS研究センター)
 
<講演概要>従来の機械安全の枠を超え、人と機械とが協調する新しい安全についての標準化と現場への導入が進んでいる。そこでは近年急速に発展したAIについても積極的に活用し、機械が、より賢く人の行動をモニタし、適切に情報を提供し、人と協調することが求められる。一方、AIそのものの安全への応用についても検討が進んでおり、これらの動きをそれぞれお伝えするとともに、人間中心の機械やAIとの協調について、今後の展開を考える。

                                                  


10:40:特別講演「自動運転”地域モビリティ“の取組み事例からの考察~スマートシティをいかに実現するか~」

<講演者>金森 亮氏
(名古屋大学 未来社会創造機構モビリティ社会研究所)


<講演者>鱗原 晴彦氏
(自動運転“地域モビリティ”コンソーシアム/株式会社U’eyes Design)







<講演概要>各地の自治体が人口減少や高齢化率の上昇に伴う移動手段の確保という課題と向き合う中で、愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンではその解決策の一つとして「気軽に乗れる自動運転サービス(※1)」が提供され、また茨城県境町では、自動運転バスが地域住民に受け容れられ既に実用化されている。両自治体は、これらの取り組みにより次世代の街づくりに積極的に取り組んでいる好事例である。本講演では、高蔵寺ニュータウン・プロジェクトの「ゆっくり自動運転」に関わるサービス構築ユニットリーダーである名古屋大学金森教授と境町の自動運転“地域モビリティ”コンソーシアム(※2)の鱗原氏により、それぞれの事例を紹介しつつ、以下の観点から今後どのように取り組んでいくべきか、を対談形式で熱く語り合う。
・移動に関する課題
・実現している利便性
・今後への取組み
尚、本講演を通じ、Society5.0が目指している「人間中心の社会」を実現する手段として、HCD-Netが推進している「人間中心デザイン(Human Centered Design)」の有効性、社会実装に貢献できる可能性について併せて議論する。
※1:高蔵寺ニュータウン石尾台地区「ゆっくり自動運転」の実証実験
※2:自動運バスと地域住民とのリスクコミュニケーションをテーマに「外向けHMI」「スマートバス停」の社会実装に取り組む

                                                  

12:00 休憩(昼食)

                                                  

13:00 HCD-Net AWARD 2023
1)審査委員長挨拶
2)審査アドバイザー紹介
3)審査アドバイザーコメント
4)最終審査ノミネート作品紹介(7作品)
5)審査結果発表及び表彰状授与
6)受賞作講評&プレゼンテーション

                                                  


14:00 招待講演1「オムロンにおける未来志向経営とデザイン」

<講演者>諏訪 正樹氏
(オムロン サイニックエックス株式会社)

<講演概要>オムロンは、創業者である立石一真が1959年に制定した社憲「われわれの働きでわれわれの生活を向上しよりよい社会をつくりましょう」を求心力や発展の原動力とし、ソーシャルニーズの創造に挑戦し続け、世の先駆けとなるさまざまなイノベーションを生み出すことで成長してきました。その過程ではSINIC理論による未来志向の技術展望、それを踏まえた社会課題に対する技術的解決が継続的に行われてきました。今回の講演ではオムロンの歩んできた歴史を踏まえて、「人と機械(AI)の融和」を切り口にオムロン流のソリューション・デザインともいえるソーシャルニーズの創造の実践についてご紹介します。 

                                                  


14:50 招待講演2「仕事のAI:AIとDXを結ぶHCD」

<講演者>鈴木 剛氏
(株式会社リコー デジタル戦略部デジタル技術開発センター)

<講演概要>近年注目されているLLMなどのファウンデーションモデルに基づくAIは、事前に学習された表現に追加学習を行うことで様々な機能を開発することができる。リコーでは業界で流通するデータや業務データに基づいてこの追加学習を行い、且つAI支援を前提に業務プロセスを設計することでDXを実現する「仕事のAI」サービスを展開している。
本講演では仕事のAIサービスの設計の考え方、DXの実現におけるAIとHCDの役割について説明する。

                                                  


15:40 パネルディスカッション
<モデレーター>篠原 稔和氏
(HCD-Net理事長/豊橋技術科学大学 客員教授
 /ソシオメディア株式会社 代表取締役)





パネリスト1:中坊 嘉宏氏
パネリスト2:金森 亮氏
パネリスト3:鱗原 晴彦氏
パネリスト4:諏訪 正樹氏
パネリスト5:鈴木 剛氏
パネリスト6:HCD-Net AWARD 2023 受賞者

                                                  

16:45 閉会

                                                  


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動画チャンネル

一部の講演は動画チャンネルで見ることができます。

HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。