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【イベントレポート】
2年ぶりにHCD-Net AWARD に関連するオンラインイベントが7月8日に開催されました。当日は、運営側の予測を大きく上回る100名を超える方々にご参加いただきました。多くの皆様に関心を持っていただけたことに感謝申し上げます。
今回のイベントでは、HCD-Net AWARD を受賞された方々によるプレゼンテーションを中心に、新たに始まるHCD-Net AWARD の概要説明会も合わせて実施いたしました。参加者のみなさまが、これまでの受賞者の実践から学び、今後の応募へ向けたヒントを得られる機会としていただけたのであれば幸いです。
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イベントの様子
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◆HCD-Net AWARD 受賞者登壇プレゼンテーション
HCD-Net AWARD 2023受賞の「迷わないショッピングモールのサインデザイン」について NTTテクノクロス株式会社 占部 舞さん、大野 健彦さんにご登壇いただきました。ご登壇の後は、大変多くの質問が寄せられ、大盛況でした。占部さんと大野さんには、参加者の皆様からいただいた質問すべてにご回答いただきました。

Q&A一覧 (全15問)
Q1: 色でフロア分けをされたとのことでしたが、色覚異常者など色で視認をしづらい方への対応はどのように考えてデザインに落とし込まれましたか?
→ A: 最低限のカラーユニバーサルデザインについては配慮しました。また、基本的に色情報がなくてもわかるようにデザインしました。
Q2: プロタイプのサイズ感はどのように目処をつけて作成したのでしょうか。
→ A: サインの大きさについては、現状のサインを現地で実測するとともに、図面をお客様からもらっていましたので、今のサインの大きさを踏襲することとしました。またプロトタイプを現地で設置、視認性を確認して、必要に応じて修正しました。
Q3: なかなか人の無意識で地図を見てると思うのですが、ユーザーの認知を調査して明らかにするのは難しいと思うのですが、工夫したところはどこですか?
→ A: 無意識にどのようなサインや他の情報を見ているかが重要であると考えました。そこで行動調査をしながら背後から常にモニターが何を見ているかを観察し、逐次質問をしました。さらに後ろから写真を撮影し、事後のインタビューで確認しました。
Q4: ユーザー調査を重視した、とのことでしたが、課題が大きそうな箇所などに絞って調査を行なったのでしょうか?場所やシナリオの選定などで工夫した点などありましたら伺いたいです。
→ A: ホテルやホールなど、メインとなる施設がいくつかありましたので、お客様と事前に打ち合わせをして、どの施設へのナビゲーションに課題があるかを事前に確認しました。そのうえで、よく使われそうな、重要な施設を回るシナリオを作成しました。
Q5: 歩行実験を通じて詳細なユーザー体験を抽出するプロセスを踏まれたとのことですが、認知特定を具体的に理解していく上では、熟練者によるインタビューが必要不可欠と考えます。今回の事例では「道に迷いやすい方」の認知特性・行動特性を理解するために、どのようなインタビュー項目を設けられたのでしょうか。たとえば、移動履歴(GPS等)をベースにして「この地点で、どうして反対側に回ったのか(何を根拠に行動したか)」などの質問をされたのでしょうか。
→ A: インタビューでは、事前に普段のショッピングモールにおける買い物行動、事後に実際にランドマークプラザの中を歩いて、お店等を探すのがやさしかったか、サインはわかりやすかったかなどを、実験中に撮影した写真を見せながら伺いました。またリアルタイムでの観察においては、何を手掛かりにしたか、なぜその方向に進んだかなどを伺いました。
Q6: 既存の施設の置き換えとなると、例えば各場所の照明によってコントラスト比が落ちたりと、机上や実験時では気づかなかったことがあったかと思います。実施時には気付かず、プロジェクト後に気づいた点、今後の改善点としたいことはありますか?
→ A: 大半のサインにはライトが付いており、見えにくいという問題はありませんでした。またテナントの主要な看板を隠してはいけないので、その点には配慮しながら設置位置を決めました。現地確認を何度も実施したので、基本的にプロジェクト終了後に気づいた改善点はなかったと考えています。
Q7: 既存の90箇所以外で、新規にサインを設置した場所があれば理由含めてお伺いしたいです。
→ A: 柱があって、歩きながら見ているときにサインが見えにくい箇所が何か所かありましたので、現地で具体的に確認しながら、必要に応じて設置位置を修正しました。柱、壁面などに、課題であったホテルへの動線となるサインを新たに設置することを提案し、採択されました。壁面に大型のサインを設置することで、非常にわかりやすくなりました。
Q8: 非常に対象となる人が幅広く、ペルソナを絞ることが難しいと思われるのですが、最終的にサインを決める決定とした軸、基準はどこにされたのでしょうか。言い方を選ばずにいうと、ある程度切り捨てる(捨てねばならぬ)意見はあったかと思い、それをどこまで拾ったか、拾う、拾わないの基準をどのように定めたのかを教えてください。
→ A: ランドマークプラザはパシフィコ横浜等の周辺施設と桜木町をつなぐ動線であり、またぴあアリーナが近隣にオープンすることから、来場者は多岐にわたると想定されました。そのため、若年層からシニアまで、また日本語をほとんどわからない外国人も対象としました。切り捨てた点は基本的にないのですが、従来のサインで中国語、韓国語など多国語で表示されていて、情報量が多すぎて見にくくなっているところは、お客様と検討の上、オリンピックのサイン、他商業施設の状況などを参考にして、英語のみに変更して、読みやすいように文字を大きくしました。わかりやすいピクトグラムを利用することで、外国人でもある程度わかるように配慮しました。
Q9: 対象を広く、ということですが、調査の結果、共通点や、逆に相違点など、ユーザーセグメントの比較で見えてきたこと、それらを1つ(1ヶ所)のサインデザインに落とし込んだ一例を教えていただけると幸いです。
→ A: 日本人を対象としたユーザ調査では、ユーザ属性によって大きく異なるということはありませんでした。一方、外国人には、既存サインは非常にわかりにくいものであるということがわかりました。そこで、外国人向けのサインについては、記述内容を詳細に再検討しました。例えば、ホテル名称は外国人にはわかりにくかったので、シンプルに”Hotel"と記載しました。
Q10: デジタルより現場中心だったかと思われますが、顧客のレビューや承認はどのようにおこなわれたのか、差し支えなければ伺いたいです。
→ A: お客様に、ユーザ調査に参加していただき、実際にユーザがどのようにふるまうかを理解していただきました。また、お客様に加え、ショッピングモールをマネジメントしている人、サイン会社などのステークホルダーに参加いただき、ワークショップで合意形成をおこないました。
Q11: ユーザー調査から迷いやすい方の認知特性・行動特性を明らかにする場合には、質の高いインタビューが必要不可欠と考えます。今回の調査において、特に「迷いやすい認知特性・行動特性を持った方」に対する質問項目の設計はどのようにされましたか。例えば、GPS位置情報などを参照して、「この地点で何で反対側に回ったのですか(何を考えていましたか)」といった、時系列で整理可能なメタ情報をインタビューに組み合わせるような施策は採用されましたか。
→ A: Q8回答と同様
Q12: ユーザー特性や環境要因の中で特にデザインに影響があったことがあればお伺いしたいです。
→ A: 例えば利用者は最初に見えた看板を辿って歩いたときに、ホテルの名前が無くなると、自分が迷ったか、あるいは目的地に到着したかのいずれかでないかと思うことがわかりました。そして周囲にホテルがないと、迷ったのではないかと不安になります。そこで大きい施設の案内は、スタートしたら常にその名称をサインに書き続ける必要があります。またランドマークプラザの特性として、フロアが多く、中央部に大きな吹き抜けがあり、利用者は遠方からサインの位置を確認したり、暗黙のうちにトイレはフロア間で同じ位置にあると想定して行動することがわかりました。サインはこれらの知見を考慮してデザインしました。
Q13: メンバーの構成は、多様だったのですか? 心理学系とか経済マーケティング系とか、グラフィック系とか、プロダクト系とか、、、、UXデザイン系とか
→ A: 3人のチームですが、全員UXデザインのメンバーでした。 また認知心理学が得意なメンバーがいたため、空間認知に関する知見、過去にNTT研究所が実施した、ナビゲーションに関する研究の知見なども参考にしました。
Q14: 他の施設への汎用性高くできるところと、施設ごとに必ず調査すべきところはどこでしょうか?
→ A: ショッピングモールの構造およびターゲットユーザによって、いくつかに類型化できることがわかりました。類似したショッピングモールであれば知見を流用できると思います。なお、思わぬところで迷う場合があるので、可能であればユーザ調査は実施したほうが良いと考えます。
Q15: ワークショップで合意形成されたとのことでしたが、どのようなアジェンダで行いましたか?準備や当日の進行で工夫したことなどあれば、併せて教えていただきたいです。
→ A: ワークショップでは、ユーザ調査の結果を踏まえて、サインデザインの基本的な指針を提示し、その指針で進めてよいかを議論しました。例えばランドマークプラザのサインとして掲載すべき重要施設は何かを議論しました。またサインの設置位置および記載情報に関するグランドデザインも決定し、その後はグランドデザインに基づきサインデザインを進めました。基本原則を決められたのが、その後のサインデザインをスムーズに進めるうえで重要であったと考えます。
◆新HCD-Net AWARDの説明
事務局より 「HCD-Net AWARD 2025」について、これまでのAWARDからどのように変わったのかと、「HCD-Net AWARD 2025」の応募要領の概要について説明しています。なお、「HCD-Net Award 2025応募要領」につきましては以下でご確認をいただけます。
・HCD-Net AWARD 2025応募要領 (HCD-Net Webサイト内)
・HCD-Net Award 2025説明 (動画: 約 6分)
※7/8のイベントより、説明部分を抜粋しています。
ご参加されたみなさま、こちらのレポートをご覧になったみなさま、ぜひともHCD-Net AWARDへの応募をご検討いただけると幸いです。
主催者一同、みなさまのご応募を心よりお待ちしております。
特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構 HCD-Net AWARD 実行委員会
概要
2年ぶりにHCD-Net AWARD に関連するオンラインイベントを開催します!
今回のイベントでは、HCD-Net AWARD を受賞された方々による登壇プレゼンテーションを中心に、新たに始まるHCD-Net AWARD の概要説明会も行います。
これまでの受賞者の実践から学び、今後の応募へ向けたヒントを得られる貴重な機会です。
一般の方も大歓迎です!「HCD-Net AWARD って何?」「受賞者はどんな取り組みをしているの?」と興味のある方もぜひお気軽にご参加ください。
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イベントのみどころ
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●HCD-Net AWARD 受賞者のリアルな実践事例を紹介
●新たに始まるHCD-Net AWARD 2025の説明会
●2年ぶりの開催でアップデートされたHCDの最新動向がわかる!
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こんな方におすすめ
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・HCDの実践事例を知りたい
・HCD-Net AWARD に興味がある
・今後の活動の参考にしたい
・UXやHCDに取り組んでいる仲間を増やしたい
※一般の方もご参加いただけます!
皆さまのご参加を心よりお待ちしております!
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開催情報・お申し込み
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・日時:2025年7月8日(火)19:00〜(約60分予定)
・入場:18:45
・会場:オンライン(Zoom)
お申し込みいただいた方には、登録されたメールアドレス宛に参加用URLをお送りいたします
見逃し配信はございません
・参加費:無料(一般の方も無料です)
・申し込み:https://hcdnet20250708event.peatix.com
・申込締切:7月5日(土)
・登壇者:HCD-Net AWARD 2023受賞 NTTテクノクロス株式会社 占部 舞・大野 健彦
・主催:特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)
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スケジュール
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18:45〜 Zoom開室
19:00 - 19:05 オープニング
19:05 - 19:45 HCD-Net AWARD 受賞者登壇プレゼンテーション
「迷わないショッピングモールのサインデザイン」
19:45 - 19:55 HCD-Net Award 2025説明
20:00 クロージング
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参加条件・環境等について
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■ 禁止行為について
ネットワークビジネス、マルチ商法、宗教による勧誘、政治的活動は禁止させていただいております。また、その他、ハラスメント等、他の参加者に迷惑をかけたり、不快にさせる行為は禁止いたします。
■ イベント中の相談について
なにかお困りごとや問題と思えることがありましたら、速やかに運営者にお知らせください。
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チケットに関する注意事項
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■ キャンセルについて
・キャンセル前提のお申込みはご遠慮願います。
・やむを得ずキャンセルが必要となった場合は、7/6(日)までにお申し出があった場合はキャンセル手続きを承ります。それ以降のキャンセルにつきましてはお受けできかねますので、何卒ご理解いただきますようよろしくお願い申し上げます。